1.3 斜面災害研究センターの提案
ユネスコ防災研究所間の合意覚書(UNESCO/DPRI−MoU)に基づく活動の一環として,平成14年1月に京都においてユネスコ・京都大学共催の国際シンポジウム「斜面災害危険度軽減と文化自然遺産の保護」が開催され,この会期中に国際斜面災害研究機構(International Consortium on Landslides)の定款の採択と会長(京都大学防災研究所・佐々恭二)の指名が行われ,「2002年京都宣言:国際斜面災害研究機構の設立」が宣言された(DPRI Newsletter No.23, 2002年)。 また,この中で国際斜面災害研究計画(IPL)を発足させること,及びその中核としてのResearch Centre on Landslides(斜面災害研究センター)を設立することの重要性が議論された。
これらの国内外における斜面災害研究センター設立への要望と所内での改組検討結果を受けて,他の1センターの新設要求とともに平成13年度概算要求として「斜面災害研究センター」新設の概算要求が提出された。ついで平成14年,平成15年度概算要求として提出されたが採択に至らなかった。 そこで地盤災害研究部門の地すべりダイナミクス研究分野と災害観測実験センターの土砂環境観測実験領域(徳島地すべり観測所)を原資として,予算・人員増を伴わない所内処置として斜面災害研究センターを新設する要求が出され,防災研究所教授会,京都大学評議会の議を経て,防災研究所の6番目のセンターとして斜面災害研究センターが平成15年4月1日に新設された。
3.1 国際斜面災害研究計画(IPL)
斜面災害に関する国際研究計画として,ユネスコ等の国連4機関と日本政府文部科学省他の支援を得て設立された国際斜面災害研究機構のイニシテイブにより開始された国際斜面災害研究計画(IPL)に中核的に関与している。他の地域においても斜面災害研究計画を担う地域センターを設立する準備がなされており,将来的には複数のセンターが地域ごとにこの役割を担うかもしれない。
国際斜面災害研究計画は,平成14年11月に最初のプロジェクトとして計画研究(Coordinating Project)9課題と会員提案研究(Member Project)14課題が採択された。斜面災害研究センターが特に関わっているプロジェクトは,計画中の国際ジャーナル「Landslides: Journal of International Consortium on Landslides」(C100),文化自然遺産地区の斜面災害危険度評価と軽減(C101),地震豪雨時の高速長距離土砂流動現象の面的予測(M101)である。この他,イタリア政府の支援を得た「レーダー干渉を用いた環境に優しい斜面計測システム:マチュピチュへの適用」,世界銀行の支援が得られることになったノールエーの地盤災害研究センター提案の「地球規模での斜面災害危険度の高い地域(global high risk landslide disaster hotspots)の評価」,米国地質調査所(USGS)とカナダ地質調査所の共同プロジェクトである「斜面災害軽減のための最良の実践例(Best Practices)ハンドブック」プロジェクトなどがある。