所長就任にあたって

井上 和也 

 このたび,5月1日付で防災研究所長に就任しました.任期は大学の法人化という 未曾有の大きな変革期に当たりますので,身の引き締まる緊張感のなかにいます。
 防災研究所が全国共同利用の研究所として5部門5研究センターに改組されたのは平成8年5月のことです。本年4月には斜面災害研究センターが新設されましたが、それ以外の大きな変革を経ずにすでに7年が経過しています。平成5年,田中寅夫所長の下で 共同利用研究所へ改組する検討がはじまり,阪神淡路大震災を経て,平成8年に それが達成されたのですから,検討から実現までに3年を要しています。10年に1度は研究体制の見直しが求められていることを考え合わせますと,防災研究所が次の新しい研究組織に進むために,この前の改組後の7年間を振り返り全体的な検討を始 めるべき時期に来ているといえます.
 防災研究所は幸いにして,平成9年4月に卓越した研究拠点(COE)に指定され,また昨年度には21世紀COE研究拠点形成プログラムが採択されています.これま での研究・教育活動が評価されたのは大変よろこばしく誇らしいことであり,同時に期待されている今後に応えられるよう努力を重ねることが必要です.さらに,手放しで自賛するだけではなく,一方でいくつかの大きな課題を抱えていることも認めなければなりません.
 法人化に必要な中期目標・中期計画を作成する過程で明らかになったこととして, 研究組織の見直しとともに,外部評価の実施,教官の任期制が挙げられます.また,その他にも,研究成果の社会的還元やより国際性の高い研究中枢を目指すことなど も, 考えるべき課題といえます.
 大学の法人化において,防災研究所もその一つである大学に付置された全国共同利用の研究所がどのように位置づけられてゆくのかを十分に注目するとともに、京都大学の付置研究所としてまた全国共同利用研究所として、つねにみずから厳しくその存在意義をみつめ直していかなければなりません。防災研究所がこのような観点からの役割を発揮する基本は、研究と教育を一層向上させることでしょう。
「災害に関する学理の研究及び防災に関する総合研究」と いう設置目的を意識した研究をさらに進展させるとともに,研究活動に基づいた教育活動をいっそう充実させることが最重要課題ではないでしょうか.
 法人化を迎える重責を,研究所の皆様方,関係の皆様方のご支援とご協力のもとに果たしたいと考えています。どうぞよろしくお願い申し上げます。