西南日本における大学合同地震観測

 西南日本において,全国の大学が共同で行う合同地震観測が昨年春からスタート し た.中国地方を横縦断する形で,40点の臨時観測点を高密度に設置した.京大防 災研 地震予知研究センターはホスト機関として計画の立案・調整と基本的なデータ 処理を 担当している。各観測点地震波形データは衛星テレメータを介してリアルタ イムで各 大学で受信でき,データ処理担当の京大防災研では,既設の定常観測点 (大学,気象 庁,防災科研等)のデータと合わせて処理を行う。観測期間は来年春 までの約2年間 を予定している.
 今回の観測が,これまで東北地方脊梁や北海道日高衝突帯などで行われてきた大 学 合同観測と大きく異なる点としては,防災科学技術研究所のHi-netの整備が完成 して いる地域での初めての合同観測であることと,中国地方の地震活動が極めて低 いこと が挙げられる.したがって,従来のように高密度観測網を形成することで, その地域 の精密な震源分布を求めるといったテーマは主たる研究目標とはし難い. そこで,自 然地震を使った構造探査的な要素を持たせるために,図に示すような中 国地方を横断 するものと,山陰海岸に沿ったものとの2本の測線状の配置をとるこ ととした.さら にローカルな地震活動や構造解析にも柔軟に対応できるように,各 測線には幅を持た せることとし,一直線ではなく数km間隔でジグザグに観測点を配 置した.2測線の交 点は最も確実に自然地震の発生を期待できる鳥取県西部地震余 震域とした.
 本観測によるデータを解析することで,中国地方における,地震活動や構造がよ り 詳しく解明されることが期待される.特に南北横断測線に沿っては非地震性フィリ ピン海プレートの形状や深部地殻からモホ面の構造,瀬戸内地域から山陰海岸にか けての 地殻構造の相違等が,山陰海岸に沿った東西測線については鳥取中部の活動 域,大山 の空白域,鳥取県西部地震震源域,島根県東部の空白域,三瓶山付近の活 動域といっ た様々な地震活動を呈するこの地域の地殻構造の比較検討が興味深い課 題である.測 線の交点である鳥取県西部地震余震域では,精密な余震の震源決定, 散乱体や反射面 の解析,深部低周波地震の観測などで成果が期待される.

(地震予知研究センター 片尾 浩)