−都市地震災害軽減に関する日米共同研究−

第4回日米合同グランティーズミーティングが防災研究所で開催される


 1995年兵庫県南部地震、1994年米国ノースリッジ地震等において、大都市直下で発生する地震に対する都市基盤の脆弱性が露呈した。その原因を同定・分析するとともに、地震に対してより強い都市を造るための諸技術・諸方策を日米が共同して研究開発そして提案すべく、1998年度から6年計画で、「都市地震災害軽減に関する日米共同研究」が始まった。米国側は米国科学財団(NSF)が予算措置を講じ、また日本側は、1999年度からは、文部科学省科学研究費特定領域研究(B)として、本共同研究を実施している。本共同研究の日本側代表は、亀田弘行(2002年3月まで京都大学防災研究所、現在は独立行政法人防災科学技術研究所・地震防災フロンティア研究センター)が務め、計10課題の計画研究を同時進行させている。米国側は、毎年の公募によって個別研究課題を選定する方式をとっており、現在までに42件の研究課題が採択された。さらに日米間の研究調整にあたるべくコーディネーション委員会を設け、小谷俊介(東京大学大学院工学系研究科)とMete Sozen(パデュー大学工学部)が委員長の任を務めている。
 本共同研究では、その開始以来、日米両国の研究調整、進捗状況報告、問題点の討議、また個々の研究者間の意見交換を促進すべく、年に1度「グランティーズミーティング」と題する合同会議を開催してきた。米国側の要請もあって、過去3回の合同会議はいずれも米国で開いてきたが、本共同研究も後半に入った本年度の(第4回)会議は、2002年10月21日、22日の両日、京都大学防災研究所で開催された。本会議には、コーディネーション委員会委員長の小谷、Sozen、日本側代表の亀田を始め、コーディネーション委員会日米両国委員7名、日本側からは各計画研究代表者と分担者を中心に計64名、米国側からは、現在進行中の研究課題をもつ研究代表者を中心に計28名が参加した。さらに、本共同研究の進捗を視察するとともに、地震災害やその軽減に関わる将来の日米共同研究の展開を討議すべく、米国からは、NSF工学担当局長のE. Gulari氏以下3名が米国側スポンサーを代表して本会議に参加した。
 本会議では初日午前中の全体セッションにおいて、現況報告と本会議の運営を確認した後、5つのグループ(強震動、地盤・基礎構造、性能設計法、先端技術、社会科学的アプローチ)に分かれ、初日午後と二日目午前中にわたって詳細を議論した。二日目の午後には再び全体セッションを設け、各グループで繰り広げられた議論の要約を報告した。各グループからの報告においては、本共同研究がすでに後半に入り、最終成果をまとめる時期が近づいていることも踏まえ、現在までに達成しえた成果の総括、本共同研究によってこそ両国が得る利益、日米が共有しうる最終成果の姿、さらにはポスト本共同研究を視野に入れた将来展望などについて、力の入った説明が続いた。これら報告に対する議論の後、本共同研究の結実に向けて、日米両国の研究者らが今後ともコミュニケーション豊かに連携することへのエールを交換し、本合同会議の幕を閉じた。本合同会議の概要、特に各グループからの報告内容をまとめた報告書を、まもなく刊行する予定である。 また本合同会議の直後に、コーディネーション委員会委員と日本側研究代表者に、NSF代表を交えて、コーディネーション委員会を開催した。この委員会では、長年にわたる、地震災害に関わる日米共同研究の成果と利益を再確認した後、本共同研究後に取り組むべき日米共同研究課題を、上記合同会議での討議や報告に基づいて議論した。その結果、 (1)都市再生のためのセンサーネットワーク技術や先端技術利用型構造システム、(2)早期地震被害対応と復旧のためのIT基盤ツールと戦略、(3)最新鋭大型動的実験施設の利用技術、を今後取り組むべき優先課題に選び、コーディネーション委員会のレゾリューションとしてこれらを採択した。
(地震災害研究部門 中島 正愛)