ワークショップ「災害を観る3」開催


 防災研究所の平成13年度特別事業費による事業の一環として,第3回ワークショップ「災害を観る」が,去る3月5日と6日の二日間,京都キャンパスプラザにおいて開催された.
 このワークショップの開催趣旨は次のようである.防災は専門家の努力だけで実現するものではなく,市民一人一人の協力が不可欠である.そのためには,市民や防災担当者に防災をわかりやすく,かつ,体系的に紹介してゆく必要性が求められよう.災害の可視化はその有力な手段であり,特に,最近のコンピューターを援用したシミュレーション技術に関する研究はめざましい発展をとげている.そこで,ワークショップ「災害を観る」では,このような技術を防災研究の分野に導入することによって,総合的な防災研究のための共通基盤の構築をめざしている.
 また,このワークショップは,「災害を可視化する」をキーワードに,これまで平成10年と12年の2回にわたり開催されてきた.これまでの3回を通して,地震や台風といった自然現象としての災害から,被害軽減対策,災害対応策,防災教育といった社会現象としての災害まで,防災に関するさまざまな分野の試みを紹介してきた.とくに,今回は,近年注目されているハザードマップを取り上げ,最先端の事例を紹介するとともに,「ハザードマップで何を伝えたいのか」,「伝えられた情報をどのように生かすのか」,あるいは「災害の可視化とハザードマップのあり方」について,現時点でどこまで実現しているのか,今後考えるべき課題は何かなどを中心に議論された.
 当日は,防災に携わる実務者,研究者ら多数の出席のもと,水災害,地震・火山災害のハザードマップの紹介をはじめ,災害可視化の最新事例を盛り込んだ13件の研究発表およびパネルディスカッションがなされ,活発な討論が行なわれた.その講演内容については以下のようであった.

一日目(3月5日(火))
開会のあいさつ,趣旨説明:京都大学防災研究所 林春男
水災害のハザードマップ
・庄内川洪水ハザードマップの作成について(名古屋市):名古屋市消防局 細萓健一
・荒川下流工事事務所における「洪水を観る」ための取り組み:国土交通省荒川下流工事事務所 田中敬也
・高潮災害:熊本大学沿岸域環境科学教育研究センター 滝川清
・津波「災害のK点」の探求:高知県消防防災課 酒井浩一

地震・火山災害のハザードマップ
・火山災害とハザードマップ:東京大学名誉教授 荒牧重雄
・「災害可視化」への富士砂防の試み:国土交通省富士砂防工事事務所長 花岡正明
・地震防災に関するハザードマップ:静岡県防災局防災情報室 岩田孝仁

パネルディスカッション:ハザードマップの現状と問題点
コーディネーター:京都大学防災研究所 林春男
コメンテーター:京都大学防災研究所 河田惠昭

二日目(3月6日(水))
災害の可視化の最新事例
・市街地火災のシミュレーション:世田谷区 野徳浩保
・防災カルテ:京都市市民安全課 杉本武史
・地震災害環境シミュレーター:東京大学生産技術研究所 目黒公郎
・早期被害把握システム:地震防災フロンティア研究センター 牧紀男
・宇治市GIS情報システム:宇治GIS研究開発支援センター 清水寛
・防災絵本:潟Wイケイ京都 卜部兼慎
閉会のあいさつ 京都大学防災研究所 河田惠昭
(以上,敬称略)
写真1 地震災害の可視化への取り組み
写真2 ハザードマップの現状と問題点についてのディスカッション
写真3 高潮災害の可視化への取り組み
写真4 火山災害の可視化への取り組み

 今後もこれを機に,さまざまな分野での関係者が一同に集い,災害の可視化についての討論を行うことによって,総合的な防災研究のための共通基盤を提供していけるものと考えている.

(巨大災害研究センター 柄谷 友香)