「平成7年兵庫県南部地震をふまえた
大都市災害に対する 総合防災対策の研究」の実施について

都市施設耐震システム研究センター 亀田 弘行 

 平成7年1月17目に発生した兵庫県南部地震による阪神・淡路大震災は、現代大都市圏を襲った直下地震としてかつてない惨禍をもたらすとともに、多くの防災課題を提起した。地震発生の直後から、今回の震災の防災科学的問題点をできる限り速やかに整理し、提言することの必要性が認識され、そのための研究計画の準備が行われた。幸いこの計画は文部省の緊急プロジェクトとして承認され、2カ月余にわたり活動が行われた。

 本研究の第一の目的は、災害研究者の知見により、阪神・淡路大震災からの復旧・復興過程に関するシナリオを構築することにある。これまでの災害研究者としての蓄積と、今回の災害現場に接して得た知見を結合して、今後の復旧・復興のシナリオでキーになる事項を体系的にまとめることを目標とした。 本研究の第二の目的は、阪神・淡路大震災の事実を前に、災害研究者の責任を検証することにある。濃尾地震(1891年)や福井地震(1948年)に見られた直下型地震の強烈な破壊力を「知識」として持ちながら、最悪の形でその蒋現を日の当たりにすると、様々な形で災害研究者としての自己検証を迫られる。今後の災害研究が真に社会の安全性向上に貢献するために見落としてはならない事項を書きとどめる検証のチャートを得ることを目標とした。

 プロジェクトでは、研究代表者・研究分担者・研究協力者あわせて56名の多分野の研究者に全国から参加して頂き、2月12〜13日及び3月23〜24日の2度ワークショップを行うとともに、その間は、それぞれ独自の調査を行って頂いた。

 研究の成果として、1)阪神・淡路大震災が提起した複雑多様な防災課題を体系化したチャート、2)これに基づいて設定された分科会からの報告、及び3)地震後に行われた防災GIS活動のまとめが得られた。これらを含む報告書が、このニュースレターがでる頃には完成しているはずであり、それらを防災関係の各方面に送付して、今後の防災計画の立案や防災研究推進の参考に供することを予定している。