3.都市巨大災害の社会科学的研究

 社会現象として災害を扱う時、研究すべき対象として2つの分野が存在する。第1は災害が発生した場合に個人や社会がどのように対応するのかについての科学的検証である。つまり災害時の人間行動や災害の社会的影響の分析を対象とした防災学の一分野として社会現象の防災を考える必要がある。第2に、地震学、土木学建築学などの防災学関連の各分野の研究成果をどのように社会還元するかという、社会的存在としての防災学のあり方の問題がある。本研究課題では、防災学の充実と防災の実務の充実の双方を可能にする総合的なシステムの構築を目指して、以下の4課題に関する研究を促進する。

3−1 最近の都市地震災害を事例とする事後対応過程の比較災害論的究明
(チームリーダー:林春男  京都大学防災研究所)
インタビュー対象とするべき情報提供者を同定し、エスノグラフィックインタビュー調査を設計する。復興状況に関するパネル調査を設計する。

タイトル日本側研究者米国側研究者
最近の都市地震災害を事例
とする事後対応過程の究明
林春男
(京都大学防災研究所)
岩崎信彦
(神戸大学文学部)
中林一樹
(東京都立大学)
立木茂雄
(関西学院大学)
小林正美
(京都大学工学研究科)
Kathleen Tierney
(Disaster Research Center,
University of Delaware)
Honma Reiko True
(University of California, San Francisco )
Stephern Toriner
(University of California, Berkeley)

3−2 総合的な損失の定量化と災害過程モデルの提示
(チームリーダー:河田惠昭 京都大学防災研究所)
震災の被害抑止対策の歴史とその背景及び、震災の被害軽減に関する現状の情報の種類とその具体的内容を明らかにする。間接被害の種類と過去の地震災害の直接被害額を算出する。

タイトル日本側研究者米国側研究者
総合的な損失の定量化と災害過程モデルの提示河田惠昭
(京都大学防災研究所)
上田孝行
(岐阜大学工学部)
塩野計司
(長岡高等工業専門学校)
Joanne Nigg
(Disaster Research Center,
University of Delaware)

3−3 防災に関する科学的知見の体系化支援ツールの開発
(チームリーダー:田中哮義 京都大学防災研究所)
阪神・淡路大震災及びノースリッジ地震に関する科学的知見の収集・体系化の現状に付いて整理し、命題化のための連携の可能性を検討する。研究知見をコンピュータ上で命題として表現する手法とそのデータベース化の手順を確立する。
タイトル日本側研究者米国側研究者
防災に関する科学的知見の体系化支援ツールの開発田中哮義
(京都大学防災研究所)
廣井 脩
(東京大学社会情報研究所)
岡田成幸
(北海道大学工学部)
目黒公郎
(東京大学生産技術研究所)
Dennis Mileti
(Natural Hazards Research
and Application Information Center,
University of Colorado)

3−4 マルチメディア災害シュミレーション手法の開発
(チームリーダー:宮野道雄 大阪市立大学生活科学学部)
開発済みのマルチシナリオ型地震被害想定システムEDReSSを基盤として、広域地震災害の地震波・津波伝播の測定手法のプロトタイプを構築する。さらに、EDReSSを基盤として、仮想現実技術を応用した被害想定手法のプロトタイプを構築する。防災研究のために必要となる仮想現実処理装置の機能拡充の実施を策定する。

タイトル日本側研究者米国側研究者
マルチメディア災害シュミレーション手法の開発宮野道雄
(大阪市立大学生活科学学部)
熊谷良雄
(筑波大学社会工学系)
今村文彦
(東北大学工学部)
Dennis Wenger
(Texas A&M University)