21世紀気候変動予測革新プログラム

「流域圏を総合した災害環境変動評価」



 「21世紀気候変動予測革新プログラム」は、地球温暖化の将来予測に関し、我が国の大学、研究機関の英知を結集し、確度の高い予測情報 を創出し、信頼度情報と併せて提供するとともに、近未来の極端現象の解析を行うことにより自然災害分野の影響評価に温暖化予測情報を 適用することを目的として、平成19年初頭に文部科学省から公募され、28件応募の中16研究課題が年度末に採択された5年間のプロジェクト (防災研究所としては総計1.5億円程度)である。確度の高い予測情報を国内外の地球温暖化対応に関する検討の場に提供し、IPCC第5次評 価報告書(2013年頃予定)への寄与をはじめ、気候変動に対する政策検討、技術的対策の立案に資することが期待されている。

 プログラム全体としては、課題1「温暖化予測プログラムの高度化」、課題2「予測モデルの不確実性の定量化・低減」、課題3「自然災害分野 への適用」で構成されており、採択された「流域圏を総合した災害環境変動評価」は課題3に属する。これら3課題は相互に連携を図ることにな っており、防災研究所は、気象研究所(課題1、2)、土木研究所(課題3)と密に連携を図ることになっている。基本的には、課題1、2の全球気候 モデル(GCM)や領域気候モデル(RCM)から提供される現気候、近未来、100年先それぞれ約30年間ずつの情報をベースに課題3が災害環境 評価を実施し、加えてフィードバックするという構図となっており、5年間の前半が現行GCM・RCMによる予備評価、後半がグレードアップされた GCM・RCMによる本評価という計画となっている。なお、他に海洋開発研究機構、東京大学の2連携グループが採択されている。詳細は文部科 学省のホームページhttp://www.mext.go.jp/a_menu/kaihatu/kankyou/hendou/07030501.htmに譲る。

 防災研究所としては、所内関連研究者への石川裕彦教授からの呼びかけを機に、「所内横断的」を最もベースに、昨年末から応募準備会を 開催し万全を期した。結果、気象・水象災害研究部門、流域災害研究センター、水資源環境研究センターで構成される大気・水グループと社会 防災研究部門が総力を挙げて進める予定にしている。他に、京都大学工学研究科、宇都宮大学、信州大学、名古屋大学、総合地球環境学研 究所を合わせて、25名の教員と3、4名のポスドク研究員とで構成しており、温暖化翻訳(物理的ダウンスケーリング(代表:石川裕彦教授)、統 計的ダウンスケーリング(代表:中北英一教授))、土砂(代表:藤田正治教授)、河川流量(代表:立川康人准教授)、高潮・高波・暴風(代表:間 瀬肇教授)、氾濫(代表:戸田圭一教授)のサブグループを設けて推進することにしている。推進内容の主要部分を図に示す。

 採択にあたり文部科学省からは「国内主要領域における極端現象の影響評価」に焦点を絞ってほしいという条件が付され(土木研究所が海 外主要流域)、それをベースに表に示したものを最低限の対象として影響予測を実施することにしている。これだけ一連の災害環境評価や、 貯水池操作を含めた河川流量等の長期連続計算を通しての時間積分型の影響評価は防災研究所にしかできないキーポイントでもある。

 これまで、4月から3ヶ月間にわたり、所内でのそれぞれの研究成果・モデルの相互理解を進めながら、GCM・RCMからどのような出力が必要 かを気象研究所と熱い議論を進め、現在は試験出力によるチェックを進めている段階である。今後、変動評価項目に関しては所内のより広い 研究者とも議論をし、さらに横の連携を進めるプロトタイプに本プロジェクトがなれるよう、限られた予算の中ではあるが、関係の皆さんと嬉々と して進めて行きたいと考えている。

(研究代表者 気象・水象災害研究部門 中北英一)