私の現状認識と今後


副所長(研究・教育委員長)

川崎 一朗

 10年ほど前、地震や測地の観測網が充実すればするほど、地 震活動や地殻変動はしっかりした固定的フレームワークの中に 収まるようになるだろうと多くの人が予想していま した。意外なことに、観測網が充実すればするほど、 サイレント地震などを例として、大地は様々な奇妙 な動きをしていることが分かってきました。「地球 を測る」重要性がむしろ増大したと言えるでしょう。 今後は、遠隔地の観測点を、宇宙技術や国規模の観 測網と連携しながら、一層発展させる工夫を考えな ければいけないと感じています。技術室との積極的 な協力が不可欠です。
 「次の南海地震」を迎え撃つ学際的研究の結び目 は「予測」でしょう。長期予測は出されましたが、 工学サイドや国民の期待は、もっと人間生活の時空 間スケールに近いもの(例えば短期予知)であるよ うに思われます。地震発生のメカニズムの理解は着 実に前進しているとは言え、予知に関しては手こず っていると言わざるをえません。
 21世紀COEや大都市大震災軽減化特別プロジェク トは、防災研究所の中で部門を越えた共同作業を促 し、学際性を促す効果がありました。ほどなく、生 存基盤科学高等研究院が身近な課題になってくるも のと思われます。問題は山積です。また、共同研究 というスキームで所外の研究者の力を借りる作業も 重要です。これから、学際性を一層効果的にするこ とを目指して、共同利用経費やリーダーシップ支援 経費などの効果的運用を考えなければならないと思 われます。
 私は、防災科学こそ「教育」にとって意義ある場 だと信じています。30万人を越える死者を出した超 巨大スマトラ地震をきっかけとして、今後、アジア からの留学生が一層増えるでしょう。一つの可能性 として、今後、彼らを、理学と工学で協力して教育 し、学際性を推進する契機としたいものです。
 河田所長を積極的に支えて行きたいのですが、私 には、どうみても、知力、体力が不足しています。 皆様方の積極的な御支援をお願いする外ありませ ん。よろしくお願い申し上げます。