京都大学防災研究所研究集会(一般)16K-01
「地震火山防災教育の教材開発と普及に向けての現状と今後」



 平成16年8月9日と10日の二日間にわたり、 防災研究所研究集会「地震火山防災教育の教材開発と普及に向けての現状と 今後(研究代表者:大阪市立大学大学院理学研究科 根本泰雄)」が、 化学研究所共同研究棟大セミナー室において開催された。
 本集会は、地震・火山に関わる教育・研究をおこなっている 北は北海道から南は九州までの各地の教育者・研究者が一堂に集まり、 今後の地震・火山防災教育のあり方に関する意見交換・議論をおこなうことを 目的として企画された。
 「時々刻々と変化していく研究成果、教育カリキュラムに対して、 教育者・研究者間のコミュニケーションの絶対的な不足」、 「教育用教材の不足」、「地学系を背景にもつ学校教員数の少なさ」、 「現職教員の研修が受けられる機会の不十分さ」、 「高等学校科目『地学』の履修率の低さ、授業時間数の不足」などの諸問題により、 適切な地震・火山に関する (防災)教育が実施されているとは言い難いのが現状である。 当日は、学校教員・研究者の両者からこれらの問題に対する 具体的な取り組み事例や現状について報告がなされ、如何にしてクリアしていくか、 長時間にわたり活発かつ有意義な討議がなされた。 無償で公開でき、学校教育でのニーズを反映した教材の開発事例、 地学の授業時間外での防災教育の実施事例、 研究者による出前授業の実施事例など具現性のある取り組みが紹介され、 大いなる今後の可能性が示された。
 しかしながら、ごく少数の教育・研究者の非常な努力によって ようやく実現できていることも事実であり、 こういった流れをより大きくし、広く普及させていくための具体的な施策に関しては 今後の課題として残された。 また、本集会において話題提供をおこなった学校教員は全員が高等学校の教員であり、 小・中学校の教員の参加がなかった。 小・中学校の教員にとっては、こういった議論をはじめること 自体に高い壁が存在するようであり、 彼らをこの流れに取り込む方法についてはさらに大きな課題として残された (適切な防災教育の実施が小・中学校の児童・生徒に対しても必要であり、 そのためには学校からの教員の声が不可欠であることは言うまでもない)。
 今回は、参加者層の影響もあり、学校教育に焦点が絞られたが、 一般向けの教育についても今後議論が必要であろう。 いずれにしても、こうした意見交換を通じて得られた問題意識、 直近の課題、具体的な取り組み事例などは大切なものばかりであった。 山積された問題を解決していくためにも、 第二回以降の継続的なまとまった議論の場は必要であり、 こうした場の提供は大学の担うべき大きな役割のひとつであることが 参加者全員によって再確認された。
(巨大災害研究センター 川方裕則)





熱心に講演を聴講している様子
(写真提供:木下紀正 鹿児島大学教授)