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 2.部門・センターの将来構想

2.3 地盤災害研究部門


1.部門・センターの目的
 低平地、丘陵地から山地に至る広い地域において、降雨、地震及び開発に伴う各種の 地盤変動現象のメカニズムを地学的、力学的に解明するとともに、これらの地盤変動現象によって生じる災害危険度を予測し、その災害を事前に防止軽減するための研究 を関連する自然科学、社会科学分野の知識を総合して学際的に実施する。

2.部門・センターの目的の変更必要性の理由と新たな目的
(理由)
将来的にも国土利用の高度化は避けられないので、それに伴って地盤災害のポテンシャルは増加し続けると予測されるので、上記目的を変更することはできないと考える。

3.部門・センターの現在の研究活動に即した目標と達成したい成果等、および、5年程度の中期目標とそれ以上の期間の長期目標
(5年程度の中期目標)
緊急課題である人命損失と防ぐための基礎的方法を確率するための研究に重点を置く。山地急傾斜地については風化と高速地すべり発生のメカニズムを解明し、危険斜面の抽出精度を高めることと、降雨浸透過程、崩壊前兆現象などの解明を通じて地すべり・崩壊災害の直前予知法を確立する。丘陵地については人工改変に伴う災害危険度を定量的に評価する。低平地については防災に役立つ地盤情報データベースの作成方法を確立する。

(30年程度の長期目標)
(1)物質被害による貧困化やインフラストラクチャの破壊を防ぐため、被害メカニズムの解明とその前提となる自学的、力学的研究を推進し、地盤災害の定量的予測を可能にする。
(2)長期的な自然・社会的変化、例えば海面上昇、建物等の高層化、都市の山地への膨張による災害ポテンシャルの増大に対処するため、これらの現象の地盤災害科学の立場からの予測、ハザードマップの作成、地盤安定性の解析、および開発と土地利用のコントロールに必要な基礎研究を行う。
(3)地盤災害科学の国際交流を通じて、戦乱や飢餓、文化遺産の喪失に苦しむ諸国を援助する。

4.部門・センターの目標を達成する上で、現在の分野・領域構成は適切かどうか。変更する場合の理由と構成
 平成8年の防災研究所改組で、地盤災害の基本的なあり方が確率しており、分野・領域構成としては適切と考えられる。しかし次のような問題が残されている。
(1)4分野に対して教官が11名しか配置されておらず人員不足である。また新設分野に対して研究室・実験室がごくわずかしか与えられていない。
(2)他研究部門との交流が不十分である。特に当部門のみ、総合防災研究部門と人的交流がないことが、当部門に社会科学的な専門手法を導入することを妨げている。
(3)国際交流のための組織が不十分である。これを解決するために部門の改組を模索しているが、防災研全体の問題として取り組んでほしい。京都大学には、東南ア研、アジア・アフリカ研究科があるが、人文科学偏重で、防災研とのリンクが困難である。

5.部門・センターの目標を達成する上で、現構成メンバーの専門分野でカバー可能か。不可能な場合に新たに必要な専門分野
(1)地盤災害の特性に立脚してGIS構築を研究できる専門家がいない。(育成できていない)
(2)地盤災害と地下水の関連を研究できる専門家が足りない。
(3)地盤災害の社会科学的側面を研究する研究所が、当部門にも他部門・センターにもない。

6.部門・センター内での大講座的運営の実態。大講座的運営のメリットとデメリット。
 当部門では、研究方法の多様性に対応して分野構成がなされており、各分野の独自性を尊重しつつ、部門全体としての研究目的の達成を目指している。
メリット:各分野での研究が効率的に行える。
デメリット:他分野の研究内容が見え難いという不満が若年層を中心に存在する。今後、研究分野の枠にとらわれない研究活動をどのように保証するか考えてゆく必要がある。

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