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 2.部門・センターの将来構想

2.1 総合防災研究部門


1.部門・センターの目的
 本部門は、阪神・淡路大震災における複合的都市災害の経験と、近年の都市構造の発展・拡大の現実を踏まえ、より総合的かつ長期的な視点に立脚した防災科学の研究を行うことを目的にしている。特に、災害リスクの評価と防災マネジメントの方法論、多元的な防災社会構造の提示とその形成論、都市空間の安全制御と都市機能の確保の方策、社会開発と環境変化のあり方を研究することにより、災害対策の総合化課題の達成に貢献することを目指している。

2.部門・センターの目的の変更必要性の理由と新たな目的
(理由)
 部門全体の総意としては、近未来的に、当初の部門設立の目的自体を変更する必要はないと考える。ただしその具体化のための研究分野の充実や再編成ならびに新陳代謝については社会のニーズや学問の進展と歩調を合わせる形で、適宜進めていくことが必要と考えている。

3.部門・センターの現在の研究活動に即した目標と達成したい成果等、および、5年程度の中期目標とそれ以上の期間の長期目標
(5年程度の中期目標)
 安全で安心できる国土や地域・都市づくりという立場から災害のマネジメントを総合的に進めていく上で、どのような社会システムや社会基盤がこれらから必要になってくるかという基本的政策課題を取り上げ、質の高い基礎的研究と社会的有用性の高い応用的研究の両側面から、システム論的・マネジメント科学的知見を提示できるような「政策リスク工学」の具体像を提示するとともにその適用性を実証する。

(10年程度の長期目標)
 政策リスク工学の確立のために、より一層人間・社会科学や経済・経営科学ならびに情報科学など専門領域からの新たな人材の確保を図ると共に、そのためのポストの拡充を目指し、本学問分野の役割とその有用性について社会的認知を得ることに努める。
 なお総合防災がめざすべき総合化は、5年程度を単位としたひとつの成果確認の区切りにして、そこで達成された「研究実績の総合化」に見合った「学際的新研究領域」を冠した部門・部署として文字通り新陳代謝することにつながりうる。そのような形で結果的に組織変革を図ることには、抵抗感はない。その意味では、上述したように、5年程度を経て「政策リスク工学」と呼べるような学際的・先端的新研究領域として脱皮、独立しうることは積極的意味を持ちうると考える。ただし、本研究所における「総合防災とよばれるべき研究領域」は、今後も10年程度のタイムスパンで継続的に存続する必要があり、超長期的に総合化をめざす「ふらん器」としての役割が不可欠である。

4.部門・センターの目標を達成する上で、現在の分野・領域構成は適切かどうか。変更する場合の理由と構成
 3. でも述べたように、総合防災に託された「当初からの設立目的」自体の追求は少なくともむこう10年以内はその看板を下ろすべきではないと考える。ただし、現総合防災部門は、今後は現スタッフの専門性を基盤としつつ、必要に応じて人間・社会科学にまたがる領域を取り込む形で、情報・マネジメント・政策科学的スタンスを志向する「政策リスク工学」という学問分野として一人だちしていくことを短期的目標としている。

5.部門・センターの目標を達成する上で、現構成メンバーの専門分野でカバー可能か。不可能な場合に新たに必要な専門分野
 政策リスク工学が確立されるためには、上述したように、人間・社会科学にまたがる研究領域や、情報・マネジメント・政策科学的スタンスを志向する研究者を確保できるポジションの拡充が不可欠と考える。また、助手などの若手研究者の育成のためのポジションを安定的に確保できるような防災研究所全体の組織的サポートが不可欠である。

6.部門・センター内での大講座的運営の実態
大講座的運営のメリットとデメリット
 助教授と教授が独立し、それぞれが対等な立場で、異なったテーマを研究する形で研究室を運営するという意味での大講座的運営は現在のところは、行われてはいない。ただし、ポジションの不足から教授だけの研究室運営(短期間のみの臨時的な助手の確保などはあるが)を余儀なくされている研究室もある。また現段階でも、積極的に研究室の枠を越えた研究ゼミの実施や部門横断的意思決定が必要に応じてなされるなど、旧来的な意味での講座の枠にとらわれない運営に努めている。今後は、文字通り「大講座的運営」の方向に舵を取っていくことを目指す所存であるが、それを単に画一的・機械的に進めるのではなく、教官の年齢やその現時点での能力・実力・経験などを考慮して柔軟に実施していくことが、結果的に当人ならびに構成員全体にとってもプラスになるものと考える。また、大講座的運営が真に機能しうるためには、個人の独立性と、階層性を伴わない教官の対等な競争原理に基づく人事システムへの転換が不可欠であるが、短期的に見て一気にそのような転換を実行することは現実的ではないし、得策でもなかろう。むしろ、そのような方向性を「変革の新たなベクトル」として位置付けて、それを長期的スパンにたって指向することが組織論的に見ても有用であろうし、国際化に適応した広い人材の確保という社会のニーズの一端に応えることにもつながると考えるべきであろう。また、そのためには、単に部門やセンターの運営の枠を越えた全所的な方向付けと強いリーダーシップが求められるであろう。

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