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8.6出版・報道関係の活動

防災研究所年報

防災研究所の活動、研究成果を報告する中核的出版物が「防災研究所年報」である。毎年14月に出版するもので、3分冊(AB-1B-2)から構成されている。分冊Aには、当該年度退官教官の最終講義録と業績リスト、当該年度における主要な災害に関する特別寄稿、公開講座におけるパネルディスカッションの記録などを掲載している。分冊B-1B-2は、防災研究所常勤研究官、非常勤教官、所外「研究担当者」の寄稿した研究論文、調査資料をまとめたものである。その内容は、防災研究所年次発表会で発表して議論、討議を経たものである。2000年度(第43号)は69件、2001年度(第44号)は76件の研究成果がまとめられている。「防災研究所年報」は、研究所常勤・非常勤教官、研究担当者などに配布するほか、国内外の研究機関などに約500部(内、国外40部)寄贈し、研究成果の普及に努めている。

「防災研究所年報」は研究所創設以来、研究所の成果公表の任にあたってきた。本研究所での研究活動の全貌をまとめて公表することや研究成果の速報性など「防災研究所年報」がもつ意義は非常に高い。しかし、近年「査読つき論文」の数が業績評価の重要な尺度になってきており、「査読つき論文」としての評価を受けない「防災研究所年報」への研究所職員の投稿意欲を低下させている。そのため長期的展望にたった年報の位置付けを議論すべき時にきているという意見もある。しかし、たとえ業績評価には入らなくとも防災研究所に関わる研究者として、質の高い論文を「防災研究所年報」に投稿することは義務だという認識をもつべきであろう。改革案としては、論文賞を設け、受賞者専用の駐車場を設置する、特別な予算配分で優遇する、防災研究所ホームページに横顔を紹介するなど投稿意欲を喚起する案があげられる。また投稿する際に使用した生データや解析結果を他の研究者が追試を行える程度まで公開することは、質の高い無査読論文を目指す上で必要であろう。

これとは別に、防災研究所教官の所外発表論文リストと論文梗概を時間遅れなしに公開する必要がある。こうすることにより、研究所や部門の活動だけでなく、個々の研究者の活動を公開することができる。

防災研究所ニュースレター

防災研究所全体の活動や研究成果をいち早く発信するために、1994年度からニュースレター「DPRI News Letter」を年34回発行している。国際共同研究や、海外の関心が高い研究課題については、その内容を英文記事にして発行している。特に1995年の兵庫県南部地震の一ヵ月後に発行された「阪神大震災特集号(英文)」は海外でも大きな反響を呼んだ。最近では「ニューヨーク同時多発テロ事件調査研究」(20028月号)、「火星の地すべり」(20022月号)など、研究者以外の読者にも興味深くわかりやすい紙面づくりがなされている。

防災研究所ホームページ

1996年より防災研究所ホームページ(http://www.dpri.kyoto-u.ac.jp)を開設しており、対外向けには行事予定、各研究部門の案内、共同研究の募集、防災研究所年報、本自己点検評価報告書、DPRI News Letter、教官の公募案内など多岐にわたる情報を発信している。防災研究に関わる研究機関として、発信する情報を比較的定常なものと、突発的な災害情報などに分け、発災直後に予想される世界各地からのアクセスに対して情報提供ができれば、さらに研究所のプレゼンスを高めることができるであろう。そのためには、突発的な災害情報を担当する部門を発災後速やかに設け、防災研究所のホームページから担当部門へリンクを張ることができる体制を整える必要がある。

防災研究所研究部門・研究センターが編集する出版物

研究所としての広報は「防災研究所年報」、「DPRI News Letter」、「防災研究所ホームページ」であるが、それとは別に各研究部門・研究センターが、独自の分野の内容を盛り込んだ研究報告を出版している。表8-6-1は各部門が発行している出版物をまとめたものである。以下は同表からの抜粋である。

総合防災研究部門は年1回「総合防災研究報告」を出版している。内容は、同部門に在籍した学生の卒業論文、修士論文をベースに研究をまとめたもので、所内はもとより、防災研究に関連する研究者や研究機関に配布されている。

地盤災害研究部門は、(社)日本地すべり学会との連携で国際地すべりニュースレター「Landslide News」(和文・英文)を1987年以来年1回発行している。3色刷りA4国際版,40ないし44ページの体裁で,現在までに13号を数え,また,約1000部を海外の主要な地すべり研究機関,研究者に配布している.なお,この編集・出版については,国連教育科学文化機関(UNESCO),国連・国際防災戦略事務局(ISDR),国連食糧農業機関(FAO),国際地盤工学会地すべり技術委員会(ISSMGE/TC-11)をはじめ,国内外の学協会,企業からの支援を受けている。また、「日本地すべり学会関西支部シンポジウム論文集」、「日本地すべり学会関西支部現地討論会資料集」、日本地すべり学会関西支部機関誌「らんどすらいど」を年1回発行している。

地震予知研究部門では、年1回「地震予知研究センター研究成果集」を発行している。内容は、地震予知研究センター構成員がその年度に発表した研究成果(主に論文別刷り)をまとめたものである。

火山活動研究部門では、火山噴火予知計画に基づく全国共同観測研究を、南九州で実施した場合にそのつど「集中総合観測報告書」を出版している。昭和50年からの実績は、桜島(9回)、諏訪之瀬島(3回)、薩摩硫黄島・口永良部島(1回)となっている。報告書は大学・学校、学会、関係省庁・自治体、図書館、防災関係機関等へ配布されている。

水資源研究センターでは、同センターのスタッフの1年間の研究内容や研究活動をまとめた「水資源研究センター報告」を毎年4月に発行している(今年度で第22号)。プロジェクト研究報告、国際会議報告、海外調査報告、研究集会報告、英文発表研究成果集、研究業績リスト、センター運営組織等で構成されている。また「水資源セミナー講演概要集」は、毎年同センターが主催となって開催している「水資源セミナー」の講演者の発表内容をまとめたものである。水資源セミナーの扱うテーマは広く水資源に関わるものであり、毎年ある程度テーマを絞って発表者を公募する。概要集はセミナー時に参加者に配布される

巨大災害研究部門では、「大規模災害対策セミナー報告書」を年1回発行している。このセミナーは、阪神・淡路大震災よりさらに大きな災害が発生した場合に,それへの対応を円滑にするにはどのような準備や危機管理をすべきかを多くの関係者に知っていただくことを目的として,毎年開催するものである.とくに,災害に強い地域づくりが緊急の課題であり,そのような観点を踏まえ,毎年,テーマを変えてセミナーを実施し,その成果を要約したものである。その他「Technical Report DRS」、「メモリアル・コンファレンス・イン・神戸報告書」、「東海・東南海・南海地震津波研究会報告書」、「比較防災学ワークショッププロシーディングズ」を発行している。

マスメディアを通じての活動

8-6-2は防災研究所職員がマスメディアに対して出演、寄稿、情報提供を行ったものをまとめたものである(16人、47件)。内容は地震、耐震構造、津波、地下街の浸水、強風、遺跡の崩壊など多岐にわたる。この種の活動は、広く一般大衆にアピールする手段として重要である。また今後はこうしたメディアに積極的に働きかけ、研究成果を広く公表することが求められるであろう。

表8.6.1 出版物   表8.6.2 マスメディア

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