Index Next

4.8 火山活動研究センター

4.8.1センターとしての研究活動

@研究対象と方針

 火山活動研究センターが設置されている南九州は、わが国で最も火山活動の活発な地域である。平成12〜13年度中にも、桜島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島で噴火が発生した。当センターは、火山学、火山噴火予知および火山災害軽減に関する全国レベルでのフィールド・ラボラトリーとしての役割を担い、内外の多分野の研究者と共同で、島弧火山活動のダイナミックス、噴火機構および噴火予知の研究を行うことを設置目的としている。単一の研究領域で教員数が限られているが、火山の研究手法は多岐にわたるため、防災研究所共同研究、火山噴火予知計画に基づく全国共同研究等を通して研究の進展を図ることとしている。

到達点:

桜島火山の活動については、前身の桜島火山観測所設置からの42年間の地震および地殻変動に関する観測研究により、噴火に先立つ、長期的、短期的および直前の前駆現象の捕捉手法はほぼ確立した。山頂噴火直前予知については地殻変動データを自動的に評価するシステムが開発され、気象台、日本航空等に提供され、火山活動の監視や航空機の被災回避に活用されている。火山災害軽減に関する研究としては、溶岩流のシミュレーション手法の開発、火山岩塊・レキ等の運動に関する研究があり、火山のハザードマップ作成等に活用されている。

しかし、雲仙普賢岳や三宅島等の活動からわかるように、火山ガス放出や地下の熱水活動など火山活動に関わる物質科学的研究、火山体やマグマ供給系の構造、過去の火山活動の実態などについての理解は不十分で、火山噴火の様式や推移の予測を含めた定量的な噴火予知・噴火災害の予測が可能な段階には至っていない。また、桜島で得られた噴火機構に関する知見や噴火予知手法の普

遍性、有効性や限界を他の火山において検証する

ことが今後の課題である。

研究方針:

当センターでは、各々の研究者がその専門性を伸ばすとともに複数の観測研究手法を習得することを求めている。また、多岐にわたる火山の研究手法の意義と研究成果を理解して、他分野の研究者と共同して新たな研究を展開することを期待している。具体的には、それぞれの専門分野に応じて外部の研究者との共同研究を実施すること、特定の対象火山における他分野の観測調査への積極的参加を推奨している。

 同時に、当センターの研究および外部の研究者との共同研究の基礎となる観測研究データを得るための作業、常時観測の保守、データの読み取り・整理、岩石試料の保管整理等についても、教官全員が分担しつつ当たることとしている。特に、桜島および薩南諸島の活火山の活動状況の把握は、研究上のみならず、社会的にも重要であり、地震記録の保守・交換については全員が交代であたり、活動状況について共通認識を持つように努めている。

A現在の重点研究課題

 噴火様式や火山活動の推移など、現在の火山噴火予知の諸問題の解決に向けて、以下のような重点課題に取り組んでいる。

1)噴火様式、噴火機構および火山活動評価に関する研究:桜島火山の爆発地震発生過程、口永良部島をテストフィールドとした水蒸気爆発の発生場、インドネシアとの国際共同研究、集中総合観測(全国共同研究) 

2)噴火の準備過程に関する研究:桜島・姶良カルデラのマグマ蓄積・貫入過程、集中総合観測

(全国共同研究)

3)火山体の構造に関する研究:火山体の3次元地震波速度構造の解析、火山体浅部の電磁気学的研究、火山体構造探査(全国共同研究)

4)長期的な噴火ポテンシャル評価に関する研

究:南九州の火山活動史の復元、火山体浅部の電磁気学的研究

 

Index Next