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4.7.2 研究領域の活動概要

[.リアルタイム地殻活動解析研究領域

    助教授 片尾 浩、助手 中村佳重郎

@領域の研究対象
定常観測網で必要と認められた地域や、大地震発生地などに機動的に出動し、効率的かつ多種目の臨時観測を行う。

A現在の主な研究テーマ
(1)鳥取県西部地震緊急余震観測  (片尾 浩)
 2000年の鳥取県西部地震は定常観測網の希薄な地域で発生した。そのため精密な余震分布を求めるためには余震域勅上に臨時観測点を設けることが急務となった。本震翌日の10月7日に現地入りし5点の観測点を設けて緊急余震観測を実施した。主たる余震活動が地殻の浅い部分に集中していることなど、定常観測網だけでは観測できない余震活動の特徴を示した。

(2)鳥取県西部地震合同稠密余震観測(片尾 浩)
 鳥取県西部地震の1週間後から、全国の大学の共同で稠密余震観測を行った。オフラインながらも57点の臨時観測点を展開し、精密な余震分布およびその発震機構を求め、トモグラフィによる地殻構造の解析を行った。

(3)兵庫県北部群発地震臨時観測  (片尾 浩)
 鳥取県西部地震の3ヶ月後の2001年1月に兵庫県北部でM5.4の地震が発生し、それに続いて群発的に多くのM4級の地震が複雑な分布を示しながら発生した。震源域はどの機関の定常観測点からも20km以上離れており、精密な震源決定が困難な場所であった。1月末に積雪をついて、震源域直上にあたる温泉町霧滝地区に衛星テレメータを設置し、地震予知研究センターの微小地震観測網SATARNにデータ送信を開始した。その結果同活動の精密な震源分布とくに深さ精度の向上に成功した。

(4)西南日本大学合同地震観測   (片尾 浩)
 2002年春より、鳥取県西部から香川県にかけて中国山地を横断する形で、また同時に鳥取県中部から島根県中部にいたる山陰海岸沿いに臨時のテレメータ観測点40点を設置し実施している。これは、全国の地震関係の大学が合同で行っているもので、地震予知研究センターはそのリーダーシップをとっている。これまでの大学合同観測と異なり、国の基盤観測網が整備済みの地域での初めての観測となる。そのため従来のようなただ単に密度の高い観測網を構築することではなく、測線状の配置をとることで構造探査的な要素を盛り込んである。また、中国地方の地震活動が他地域に比べ低調であることも本観測の特徴と言えるが、ソースとなる自然地震の発生が最も期待できる鳥取県西部地震の余震域を2つの測線の交点としている。本観測は約2年間の予定で継続中で、主なデータ解析も地震予知研究センターが担当する予定である。主な研究テーマとしては、非震性のフィリピン海プレートの形状や、深部構造や反射面・散乱帯、対照的な地震活動を呈する各地域の地殻構造の比較などが挙げられる。

(5)重力探査          (中村佳重郎)
 御前崎、紀伊半島、四国東部において重力の時間変化の観測を定期的に実施している。

(6)その他
 鳥取県西部地震直後にはGPS臨時観測網を展開し、余効変動の観測に成功した。また、定期的に高密度のキャンペーン観測を、中央構造線、花折断層周辺、紀伊半島などで実施している。
 その他、紀伊半島、四国地方などで温泉水・地下水の観測を行っている。

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