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4.7.2 研究領域の活動概要

\.上宝観測所

       助教授 伊藤 潔

@分野の研究対象
地殻変動、地震活動、全磁力変化など

A現在の主な研究テーマ
1)地殻変動連続観測、GPS観測による地殻歪、傾斜変化と地震発生の関連
2)地震観測による地震活動調査
3)全磁力の観測による地磁気変化

B各研究テーマ
(1)地殻変動連続観測による地殻歪、傾斜変化と地震発生の関連     (伊藤 潔、和田安男)
当観測所は第1次地震予知計画に基づき、昭和40年に上宝地殻変動観測所として設立された。それ以来、蔵柱観測壕において、歪計、傾斜計による観測が継続されている。これらは温度、気圧、降雨などの影響を受けるので、同時に気象要素の観測も実施されている。これらの観測はその後、総合観測線として拡張され、宮川、西天生、宝立、立山および須坂などの観測点でも連続観測が実施されている。地震に関連する地面の微少な変化を観測するのが目的であり、有感地震の前後の変化を地震予知連絡会に報告し、地震発生との関連を探っている。近年ではGPS観測が実施されるようになり、当観測所も早くからGPS観測点の一つとして、連続観測が実施され、当該地域の観測網の基地となっている。また、跡津川断層を横切る稠密GPS観測網のデータ収録地にもなっている。平成10年からGPS観測点をキャンペーン観測から順次連続観測点に変えて、跡津川断層を境として、変位ベクトルの向きが変わる結果を得ている。この地域は新潟−神戸歪み集中帯の一部をなしており、活断層の運動の解明のためにも、有用なデータが蓄積されている。また、跡津川断層では光波測量による調査も実施されているが、この結果ではクリープ運動を示す変位は検出されていない。

(2)地震観測による地震活動調査(伊藤 潔、和田博夫)
当観測所では微小地震の観測も開始され、1976年にはテレメータによる短周期高感度観測網が設置された。当初3点で開始された観測網は、徐々に観測網が拡充され、1996年には9点になった。さらに、周辺観測網とのデータの交換が行われ、衛星通信利用の観測網の設置によって、平成14年度からは地震予知推進本部が建設したHi-netの観測データも収録するようにし、現在では100点に近い観測点のデータを取得・解析している。初期の観測網で、跡津川断層沿いには地震が集中して発生していること、飛騨山脈には多数の小地震が発生すること、その間に地震活動が非常に低い地域があることなどが分かった。最近では多数の観測点による観測網によって、1998年飛騨群発地震が詳細に解析され、応力場なども解明されつつある。さらに稠密な臨時観測網によって跡津川断層の地震分布、特に深さの分布が精度良く求められ、クリープ運動との関連が議論されている。長期間のデータでは低周波地震、S波のスプリティング、Q地の時間変化、統計的解析などの研究も実施されている。さらに、広帯域地震計および強震計も設置されており、この記録の波形も利用されている。

(3)全磁力連続観測による地磁気変化の研究(大志万直人、伊藤 潔、和田安男)
プロトン磁力計を用いた地磁気全磁力の連続観測を、西天生、宝立の2観測点で実施している。これらの観測点はノイズが少ない地点を選んで設置されており、全磁力観測の良好な観測点となっており、長期間データを提供している。この全磁力値データは、地震予知研究センターの鳥取、鯖江、天瀬、峰山、北淡町で観測されている全磁力連続観測のデータと合わせて、日本全体の地磁気標準変化モデル(JGRF)の作成のための基礎データとして地球電磁気研究者に活用されている。

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