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4.7.2 研究領域の活動概要

U.地震発生機構研究領域

      教授 川崎一朗、助教授 柳谷 俊

@領域の研究対象
地震は人間社会に甚大な被害を及ぼす目に見える現象であるが、地震と地震の間にも、地下深部の人間の目に触れないところで多様な時空間スケールの事件が生じている。地震の準備過程である震源核もその一つである。様々な観測研究、実験研究、解析研究を通してこのような現象を見出し、それらを総合的に検討して現象の物理的意味を理解することが第1の目標である。その基礎の上に、どのような観測量を測定したらよいかを明らかし、現実の地震の発生予測につなげて行くことが地震発生機領域の第2目標である。

A現在の主な研究テーマ
1)サイレント地震の研究
2)断層面の固着状態解明の実験的研究(柳谷)
3)間隙水圧および地殻の比抵抗測定(柳谷)

B各研究テーマ名
(1)サイレント地震の研究     (川崎一朗)
 1990年代に入って、日本列島周辺で、10個弱のサイレント地震が発見された。発見された限りでは、サイレント地震は深さ30km前後の、「固着域と定常すべり域の遷移帯」に発生し、空間的には巨大地震のアスペリティと空間的に棲分けている。予知に向けての問題点は次の通りである。サイレント地震は震源核と同じ性質を持つ物理現象と見なせるのか?それはどのような条件の時に巨大地震に成長するのか?観測データから地震発生時刻を予測することが出来るか?
 一つのエンドメンバーとして、プレート境界面が限りなく均質とすると、ひとたび震源核が生じると、震源核は単調に加速・成長するということになる。他方のエンドメンバーは自己組織化された臨界現象であろう。この中間で起こる現実の震源核の成長をコントロールしているのはプレート境界面の摩擦強度の不均質分布である。地震アスペリティとサイレント地震の空間分布は摩擦強度の分布を教えてくれる。地震予知に向けての中期目標として、GPSデータおよび地殻変動連続観測記録を用い、サイレント地震を出来るだけ多く見い出し、すべり域をマッピングして行く解析的研究を推進している。

(2)断層面の固着状態解明の実験的研究(柳谷 俊)
 断層面の固着状態の不均質と不安定すべり発生の関係を解明するために、接触面を透過する弾性波を用いた実験から岩石接触面の固着状態を解明する研究を行なっている。

(3)間隙水圧および地殻の精密比抵抗測定(柳谷 俊)
 地震の前兆現象の一つと考えられている地殻の比抵抗の変化の有効性を検証するため、精密比抵抗測定のための装置の開発が行われた。これにより、室内の岩石試料を用いた予備実験の後、野外での比抵抗の絶対値と相対値な変化を従来より2桁以上分解能を向上したテストが行われ、その実用化に向けての研究を行こなっている。

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