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4.4.2 研究分野の活動概要

U.洪水災害災害研究分野

教授  寶  馨、助教授 立川康人、助手  牛山素行 (平成13年12月まで)

  洪水災害の発生要因と発生機構を究明し、その予測手法および洪水災害の防止軽減を図る方策を得ることを目標として研究・教育を行っている。

 現在の主な研究テーマは、
1)洪水流出発生機構の解明とモデル化に関する研究
2)水のリアルタイム予測と制御に関する研究
3)大陸河川流域の水循環に関する研究
4)極値水文現象の確率統計解析と治水計画論に関する研究
5)洪水のモニタリング・予測・制御のためのリモートセンシング情報、地理情報システム、ハイドロインフォマティクスに関する研究である。

(1)洪水流出発生機構の解明とモデル化に関する研究              (寶、立川)
 合理的な河川計画を立てるためには、河川流域の多数の対象地点での河川流量を的確に再現・予測することが重要となる。そのための数値予測モデルが流出モデルである。本研究では、流出モデルの再現・予測精度を向上させるために、地形・土地利用・降水などの空間分布情報を入力とし、流域内部の様々な地点での水移動を再現・予測する分布型流出モデルの開発を継続して行なっている。その一環として平成12年8月下旬に発生した東海豪雨に関して、流出モデルによる洪水流出量の推定を行うとともに、氾濫水位の再現計算を行なった。また、分布型システムを実用化する際に問題となるモデルパラメタおよび降雨の時空間スケールについてモンテカルロ実験による感度分析を行った。

(2)水のリアルタイム予測と制御に関する研究(寶、立川)
 水工施設の管理や避難体制を取る上で、実時間での降雨・流出予測情報は非常に有効な情報となる。本研究室ではこれまで、時々刻々の水文観測情報を取り込みつつ数時間先の河川流量・水位を予測する実時間流出予測法を開発してきている。特に、平成12、13年度においては、レーダー雨量を用いた実時間降雨予測の不確かさを提供するための手法の開発、およびそれと分布型流出予測モデルとを組み合わせた実時間流量予測システムを構築する手法について考察した。

(3)大陸河川流域の水循環に関する研究(寶、立川)

 将来の水資源の変動や異常気象による水災害の発生を地球規模で予測するためには、気象予測モデルと連係した地上での水循環を代表するモデルが必須となる。このようなモデルを開発するために、気象現象の時空間スケールと地上での水理・水文現象の時空間スケールとの違いを考慮したマクロスケール水文モデルの構成手法を検討してきた。平成12、13年度においては、GAMEプロジェクトの研究対象流域である中国淮河流域(140,000ku)を対象とするマクロ水文モデルを用いて、再現流量に及ぼすforcing dataの時間空間分解能と流域面積との関連を分析した。

(4)極値水文現象の確率統計解析と治水計画論に関する研究           (寶、立川)
 豪雨や洪水の極値(ある一定樹期間における最大値、例えば年最大値)が水工計画や水工設計において用いられる。
すなわち、極値データの頻度解析により確率水文量(T年確率洪水)が推定され、それに基づいて治水計画や施設設計が立案される。本研究室ではこれまで、当該極値水文量に対して用いられるべき確率分布(経験分布や理論分布)及びそれに対して最適な母数推定法を明らかにするとともに、極値データへの適合度、確率水文量の推定誤差を客観的に評価する手法を提案してきた。平成12、13年度においては、年最大値ではなく、非毎年最大値の系列(年間第2位や3位でもその他の年の最大値を上回る場合はそれを採用する)を用いる方法や、可能最大降水量や可能最大洪水を導入した両側有限の確率分布の利用、また、小標本(データ数が少ない場合)の取り扱いについても検討した。また、計画降雨の空間分布を模擬的に発生する手法として、ランダムカスケードモデルの適用を試みた。

(5)洪水のモニタリング・予測・制御のためのリモートセンシング情報、地理情報システム、ハイドロインフォマティクスに関する研究(寶、牛山)
  洪水災害や流域水循環などの河川・水文に関わるデータは種々多様である。これらのデータを研究・実務で有効利用するために、河川・水文に関わるデータを管理するための手法を検討している。また、1999年広島豪雨、2000年東海豪雨などの豪雨災害に関する情報を Web上で迅速に整理・公開するとともに、その利用特性についての検証を行った。さらに、Internet や i モードなどを活用して、降水量観測データなど豪雨災害時の警戒避難の基礎資料となるデータをより使いやすく伝達するためのシステム開発を行い、伝達されたデータがどのように活用されているかを調査・分析した。

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