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4.3.2 研究分野の活動概要

U.山地災害環境分野

教授 千木良雅弘、 助教授 諏訪 浩
助手 斉藤隆志


 当分野では、主に山地で発生する地盤災害およびその素因となる地質・地形過程について、下記の項目を中心に研究を進めている。1)山体の重力による変形、および大規模崩壊に関する研究、2)岩石の風化メカニズムと速度、および崩壊の免疫性に関する研究、3)土石流などの急速な土石の移動の現地観測とモデル化に関する研究、4)山地の水文環境と地形形成プロセスの研究、5)突発的地盤災害の地質・地形学的研究6)山地災害の防止・抑制のための土地利用に関する研究。当該期間における研究成果は以下の通りである。

(1)山体の重力による変形、および大規模崩壊に関する研究
 大規模崩壊は小規模な崩壊に比べて発生の頻度が少ないが、一旦発生すると甚大な被害を及ぼすことが従来の経験からわかっている。我が国のように地震活動が活発な地域では、その発生場所の予測は緊急の研究課題である。当該年度には、1999年の台湾集集地震の時に発生した大規模崩壊地の地質と地形を詳細に調査し、それらの発生メカニズムを明らかにし、それらの発生場所が地質・地形的に予測可能であったことを明らかにした。

(2)岩石の風化メカニズムと速度、および崩壊の免疫性に関する研究
 地域の長期的防災計画策定、および市町村単位程度の警戒警報発信に資するため、岩石の風化帯構造の特性解明、地下水浸透現象の解明、崩壊の発生と免疫性との関係について研究を進めている。当該年度には、深層風化した花崗岩が急速に再風化し、急激なフロントをもって劣化することを、電気、弾性波速度を媒体として画像として示すことに成功した。また、平成10年度に発生した福島県南部豪雨災害と毎年のように繰り返されるシラス災害とは、同様に火砕流凝灰岩の分布地でおこっているが、それぞれ風化帯構造が異なり、それを反映して崩壊メカニズムが異なることを示した。

(3)土石流などの急速な土石の移動の現地観測とモデル化に関する研究
 土石流の発生流下に伴う地盤の振動は、これを探知して土石流の警報を発したり、土石流の規模を把握するために利用できるようになってきた。これらの作業を精確に行って土石流による災害を軽減するために、土石流による地盤振動のエネルギーフラックスを評価するべく弾性波発振伝播モデルを考案した。これに長野県焼岳上々堀沢での現地観測で得られた振動のデータや弾性波探査によって得られら地盤定数を用いて、土石流のエネルギー損失に占める弾性波成分を評価することに成功した。

(4)山地の水文環境と地形形成プロセスの研究
 シラス分布域において、風化帯構造の調査とともに、降雨浸透挙動を観測した。その結果、風化帯構造に対応して水分が浸透してゆくことがわかった。すなわち、シラスの場合には、風化帯基底での毛管障害現象によって水が風化帯に滞留し、その結果斜面が不安定になってゆくことが明らかになった。

(5)突発的地盤災害の地質・地形学的研究
 平成12年の神津島地震・豪雨災害の現地調査を行い、崩壊分布を明らかにした。さらに、崩壊地が地質に規制されて発生していること、また、透水性の高い地質を反映して、地震に引き続く豪雨によっては崩壊の発生は少なかったことを見出した。

(6)山地災害の防止・抑制のための土地利用に関する研究
 山地に拡大してゆく都市を山地災害から守るため、都市に近接する不安定斜面の抽出技術として、1998年福島、1999年広島災害地域に、レーザースキャナーを用いた詳細地形解析を適用した。

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