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4.3.2 研究分野の活動概要

T.地盤防災解析研究分野

教授 嘉門雅史、助教授 三村 衛 助手 乾 徹

@分野の研究対象
都市地盤、水際線地盤、低平地

A現在の主な研究テーマ
都市開発に伴って生じる地盤変動問題と環境汚染問題を主たる研究テーマとしている。特に沿岸部水際線の軟弱地盤に展開する大規模人工地盤の変形問題、液状化、構造物と地盤の相互作用などについて、模型実験、現場実験、数値解析を通した総合的な取り組みを行っている。

(1)地盤環境の保全と活用     (嘉門、乾)
地盤環境問題の中でも廃棄物の処理・処分問題、および有害物質による地盤汚染問題は地盤環境の保全と密接に関連し、人間生活への環境災害防止の立場から極めて重要な課題となっている。本分野では、以下に示すように、廃棄物の地盤工学的利用に対する新しい提案を行うとともに、廃棄物利用・処分がもたらす環境影響評価技術および対策技術の開発を通して、地盤環境の保全を図っている。
1.石炭灰・建設汚泥・砕石粉等の産業廃棄物の地盤材料への有効利用
2.地盤中における廃棄物材料からの重金属等の溶出特性の把握
3.廃棄物の有効利用に伴う環境影響評価とその対策技術の検討
4.酸性雨の地盤および安定処理土への影響把握
5.廃棄物埋立地盤の早期跡地利用技術の開発
6.地盤中における揮発性有機塩素化合物の挙動把握

(2)地盤改良技術に関する研究 (嘉門、三村、乾)
軟弱地盤の改質や汚染地盤対策をはじめとして、地盤改良工法の地盤防災分野への適用は必須のものとなっている。その中で、科学的安定処理、ジオシンセティックスの地盤改良への適用を主たるテーマとして研究を進めている。
1.石灰系安定処理土の路床・路盤材への適用技術
2.ジオシンセティック水平排水材による軟弱粘性土補強盛土の構築
3.バイパスドレーン工法の開発と地盤工学への適用
4.セメント改良土からのアルカリ溶出特性とその制御
5.セメント固化による重金属汚染土の不溶化処理に関する研究

(3)廃棄物処分場における遮水工の性能評価と処分場設計            (嘉門、乾)
有害物質、環境影響物質を含む廃棄物の埋立処分にあたっては、浸出水による周辺環境の汚染が懸念されるため、適正な遮水工の整備が不可欠である。本分野では、以下の項目について検討を行い、廃棄物処分場の適正な遮水構造および設計コンセプトの提案を行っている。
1.処分場底部遮水工に用いる粘土材料、GCL材料の性能評価
2.廃棄物処分場カバーシステムの材料評価と水分収支のモデル化
3.海面埋立処分場の護岸構造の性能評価と適正構造の提案

(4)軟弱地盤の変形と安定性評価に関する研究(嘉門、三村)
大都市が展開する沿岸部軟弱地盤の変形と安定性は社会基盤の安定的な供用と効果的な経済活動にとって不可欠である。近年、構造物の大型化、開発域の大水深化によって従来無視されてきた深部洪積粘土の圧縮が顕在化してきている。本研究では、旧来の土質力学の枠組みでは処理しきれない構造を有する洪積粘土の時間遅れ変形を、現場の計測実績に基づいてモデル化し、数値解析手法を新たに提案することにより、合理的に評価することを目的として研究を進めている。

(5)砂質地盤の液状化抵抗評価と地盤の流動化に関する研究       (三村)
埋立地盤と自然堆積地盤の液状化抵抗を室内試験、原位置試験に基づいて評価する手法を開発した。また重力式岸壁の地震時動的挙動については遠心力載荷実験に基づくモデル実験による研究を行っている。具体的には、
1.構造を有する自然堆積砂と再構成砂の動的挙動に関する研究
2.コーン貫入試験による原位置液状化抵抗の評価
3.遠心力載荷実験による地震時の地盤と構造物の動的相互作用に関する研究

(6)RIコーンによる大規模埋立地盤の品質評価に関する研究             (三村)
1990年から民間企業との間で開発をてがけてきたRIコーン貫入試験装置を実用化し、国立シンガポール大学との共同研究として、同国政府Housing Development Boardの事業であるチャンギ沖のTekon埋立プロジェクトに公式ツールとして導入された。通常のサンプリングでは時間と労働力が追いつかない規模の工事であり、かつ、硬質粘土塊を浚渫して埋立材として転用している特殊地盤であることから、RIコーンの有為性が認められ、現在工事の進捗にしたがって、密度分布と含水比分布を計測することによる埋立地盤の品質評価に用いられている。研究的には、粘土塊、砂の複合地盤の圧密特性、粘土塊の空隙閉塞と遅れ変形のモデル化といった新しいテーマに取り組んでいる。

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