Index Next

4.10 巨大災害研究センター

4.10.1センターとしての活動概要

@研究対象と方針

近年の急激な社会構造の複雑化・高度化は多様な自然災害の発生をもたらし、巨大災害につながる危険性を大きくしている。そこでは、自然災害の性質ばかりでなく、人為的な要因によって被害が連鎖的に拡大して、社会に未曾有の衝撃を与える。従って、自然科学と社会科学を融合した共同研究体制が必須であり、それによって初めて総合的な減災システムの構築が可能となる。

 平成8年度発足した巨大災害研究センターでは、これらの研究をさらに発展させ、3つの柱、すなわち巨大災害過程(Information and intelligence)、災害情報システム(Preparedness and Societal Reactions)、被害抑止システム(Urban Design and Planning)の領域の共同研究を推進してきている。これらの研究分野は複合的であって、専任の教授3名、助教授2名、助手2名は、本学の工学研究科、理学研究科、情報学研究科にそれぞれ所属しており、現在、修士・博士課程の大学院生の研究指導は、それぞれの研究科からの合計17名について実施している。なお、これ以外に国内客員教授、助教授各2名、外国人客員教授1名の定員の他、現在、非常勤講師3名、学内研究担当教官4名によって共同研究を実施してきている。当センターは発足当時より所内共同研究センターに位置づけられており、毎年、防災研究所年報Aに『防災問題における資料解析研究』として、研究成果を要約したものを刊行しており、平成13年度で28号を数えている。また、昭和57年度より自然災害科学データベース『SUIGAI』の構築と公開は、このセンターと全国5地区の資料センターの共同作業の中核的な成果である。現在約6万件が登録され、科学研究費公開促進費によって毎年約6千件ずつの増加を図っている。

 特に特筆すべきは平成7年に発生した阪神・淡路大震災に関する調査研究であって、これに関する当センター専任教官による自然・社会科学分野の論文、報告が平成129月までに500編以上発表され、招待講演は延べ数百回に達している。

 さらに、過去2年間だけでも、2000年有珠山噴火災害、三宅島噴火災害、東海豪雨災害、鳥取県西部地震災害、米国世界貿易センタービルテロ災害の災害調査を主体的に実施してきた。とくに阪神・淡路大震災では、発生直後の緊急対応期から復旧・復興期の全過程について、地域防災システム研究センター、そして平成8年度新設後の巨大災害研究センターは総力を挙げて組織的研究に取組んできた。この間、当センター所員は、政府の関係機関はもとより被災あるいは近隣自治体の地域防災計画策定の専門委員会などに積極的に委員長・委員として参加し、また、多くの講演会、シンポジウム、ワークショップの企画・運営さらに招待講演の形で研究成果の社会への還元を図っている。

A現在の重点研究課題

 当センターが実施している重点的な研究課題は次のとおりである。

1)阪神・淡路大震災の復興課程の追跡調査と被災者の生活再建

2)東海・南海地震と津波災害を視野に入れた広域巨大災害の被害評価と減災策 

3)環太平洋地域の地震・津波災害ポテンシャルの表示と減災策

4)都市地震と都市水害の危機管理

5)災害情報のディジタル・シティによる表示と

解析

6)日米共同研究による比較防災学の構築

7)都市複合空間水害の総合減災システムの開発である。さらに、当センターで所管している事業は、

1.Memorial Conference in Kobeの開催

2.地域防災計画実務者セミナーの実施

3.災害対応研究会の開催

4.東海・東南海・南海地震津波研究会の開催

5.大規模災害対策セミナーの実施

6.「災害を観る」ワークショップの隔年実施

7.巨大災害セミナーの開催(隔月)

などであり、現在、日本自然災害学会の事務局を置き、学会活動を支援している。


Index Next