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4.10.2 研究領域の活動概要

T.巨大災害過程研究領域 教授 河田惠昭、助手 高橋智幸

@領域の研究対象
災害による人的・物的被害を軽減するための研究を行う。まず、国・地域・都市の防災力、災害脆弱性、ハザードとしての外力および災害リスクの定量的な評価方法を開発する。そして、巨大災害の発生法則を明らかにするとともに、人的・物的被害予測を実証的に行う。さらに、防災コスト、高齢化および都市化などの要因による被害様相変化のシナリオを考慮して、ハード(被害抑止)とソフト(被害軽減)防災の組み合わせによる防災対策を提案する。これらの応用として、危機管理の立場から自然災害の被害軽減策を見出すとともに、企業立地、経営管理や大規模事故への適用性を高める。つぎの課題がある。

1)巨大災害の復元と被害拡大要因
2)人的・物的被害の定量的評価
3)広域・複合災害の防災対策
4)災害情報とコミュニケーション
5)大災害・事件・事故の危機管理
6)阪神・淡路大震災の教訓と復興

A現在の主な研究テーマ: (1)巨大災害・都市災害          (河田惠昭、助手 柄谷友香(人と防災未来センター・専任研究員)
 阪神・淡路大震災以降、都市災害による人的・経済的被害の評価方法を構築してきた。これらの手法は政府や自治体で採用され、現在に至っている。また、2001年9月のニューヨークテロ事件に対する調査から、発災直後からの対応は都市災害としての様相を示しており、わが国で今後発生が懸念されている、各種都市災害への対応の教訓となるものと推察され、日米で共同研究を始めている。

(2)危機管理 (河田惠昭、客員助教授 永田 茂)
この手法は自然災害のみならず、社会災害にも多く適用可能なことがわかってきた。まず、1996年の豊浜トンネル事故調査委員会活動結果から、わが国では行政・地域(企業などを含む)・市民の間のパートナーシップが重要であることを提言し、その結果は、自主防災組織の活動などに広く使われている。有珠山の噴火災害では政府の緊急対策本部と地元自治体との関係について、多くの提言を行い、円滑なマスメディア対応などの成果として報告されている。また、2001年に発生した明石市・大蔵海岸における花火大会歩道橋事故や、同海岸での砂浜陥没事故では、事故原因の究明や再発防止に対して、被害抑止、被害軽減、対応、復旧・復興計画に組織的な取り組みが必要なことを示してきた。また、能勢郡のダイオキシン焼却炉問題や企業防災においても、危機管理の立場から積極的な取り組みが開始されており、当センターはその先導的指導を行ってきている。

(3)高潮・洪水・津波氾濫とその防災 (河田惠昭、高橋智幸、柄谷友香)
2000年東海豪雨災害に際しては、いち早く現地調査を開始し、都市水害の持つポテンシャルの総合的な評価を行ってきた。中でも、情報の内容、伝達、共有化などに関しては多くの問題点があることを指摘し、その改善策が被災自治体で採用されてきている。これに関して、地下空間の安全性に対する高まりを積極的に仕掛け、またその対策に対して積極的な助言を行うとともに、総合減災システムの提案を行ってきている。東海・東南海・南海地震と津波災害に対しても、数値計算の精度向上やハザードマップを作る場合の問題点などについて多くの研究と行政の助言を行ってきている。1998年の八代海の高潮災害においても、高潮情報のあり方に関する種々の提言を行ってきた。これに関して伊勢湾台風高潮災害40周年やジェーン台風高潮50周年事業を実施した。

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