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 3.3.2 一般研究集会 平成13年度


平成13年度

(研究課題の選考概要)12件の応募があった。企画専門委員会では、各申請課題について、研究集会の意義・特色、集会の開催地・経費の妥当性について検討の後、コメントを付した別表を作成し共同利用委員会に提示した。
共同利用委員会における審議の結果、平成13年度一般研究集会として9件を採択した


(13K-1)鳥取県西部地震災害シンポジウム
開催日時:平成13年5月6日13時〜17時
開催場所:日野町文化センター  (鳥取県日野郡日野町)
研究組織
研究代表者
 西田良平(鳥取大学工学部 教授)
所内担当者
 松波孝治(京都大学防災研究所 助教授)
研究分担者 
 熊谷昌彦(米子工業高等専門学校建築学科 教授)
 岩下文広(鳥取県防災監)
 武本和之(鳥取県西部広域行政管理組合消防局警防課救急救助掛長)
 植田俊幸(鳥取大学医学部神経精神医学研究室 助手)
 北原昭男(鳥取環境大学環境デザイン学科 助教授)
 林 康裕(京大防災研究所 助教授)
 小林正実(滋賀県立大学環境科学部 助手)
 玉井宏章(広島大学大学院工学研究科 助手)
 藤村 尚(鳥取大学工学部土木工学科 助教授)
 榎 明潔(鳥取大学工学部土木工学科 教授)
 河原正彦(鳥取県農林水産部 政課長)
 梅田康弘(京大防災研究所 教授)
 藤原悌三(滋賀県立大学環境科学部 教授)
 石丸紀興(広島大学大学院工学研究科 教授)
 牧 紀男(理化学研究所地震防災フロンティア研究センター 副チームリーダー)
 浅井秀子(学校法人藤田学院 鳥取短期大学 講師)

(a)背景と目的
大きな災害が起きると、防災・自然科学の研究者は被災地へ行き災害調査・観測を行う。当然、住民(被災者)の協力無しには目的を達成できない。時には、まだ心の傷が癒えない被災者に協力を依頼していることがあるかもしれない。しかし、住民はそれでも協力を惜しまない。これは調査結果が住民に還元され、安心できる町づくりに役立つという大きな期待があるからだと思う。研究者はこの期待に応える義務を持っている。
調査・観測に基づいた災害の科学的考察・成果は、災害シンポジウムで報告されたり、報告書あるいは科学雑誌に論文として掲載され、防災研究者の義務は一応これで果たされると考えられてきたのは否めない。しかし、被災者はこれで研究の成果を理解し、今後に活かせるのであろうか、研究者は成果を地元に還元したことになるのだろうか。おそらく、それだけでは不十分である。そこで、被災地に戻り、直接住民と一緒に災害を考え、科学的分析結果を共有し、安心できる町づくりを共に考えることが研究者として果たすべき義務であると考えた。これが、今回被災地日野町で災害シンポジウムを開催した所以である。
このシンポジウムは、住民と研究者が今回の災害の科学的分析結果を共有し、災害の体験・教訓を今後の町づくりに、いかに活かし、また、後世に伝えるかを議論することを目的として、平成13年5月26日、350人を越す住民の参加を得て日野町文化センターで行われた。

(b)討議または発表テーマ
被災地における住民参加型のシンポジウムであるため、その構成は従来の定番型ではない形をとった。先ず、「セッション1:その時みんなは」として、多方面の住民の方々及び研究者から、地震時の対応の様子・問題点を報告していただいた。次に、「セッション2:被害はこうだった」として、防災研究者に被害調査結果を平易に説明していただいた。さらに、「セッション3:今回の地震のからくり」として、地震研究者から今回の地震についてわかりやすく説明していただいた。最後に、「セッション4:安心できる町づくり」として、住民の方々及び研究者に現状と問題点、そして今後の町づくりについて議論していただいた。

(c)成果の概要<BR> 典型的な中山間地域で発生した今回の地震災害は、社会、経済、文化等の地域の特徴を浮き彫りにした。この報告書を見ていただければわかると思うが、過疎地域、老人、自治会、民生委員、学校、病院、住宅、地方の文化、豊かな自然、町おこし等のキーワードが目につく。理工学的見地からの災害の検証と対策の提言は当然のことながら、社会、文化等の地域性を考慮した災害復興、町おこしのための提言が求められていることに注目したい。
自然現象をトリガーとして発生する災害の形は、地域社会のありように大きく依存して余りにも多様である。今回のように被災地で住民と研究者が共に災害について考え、地域社会に合った安心できるまちづくりについて議論するシンポジウムの形態は、この多様な災害に立ち向かう一つの手段になるものと考える。
最後に、反省点を一つあげておきたい。それは、参加者が全て社会人であり、中学・高校生の姿が見えなかったことである。災害体験・科学的知識の伝承、防災教育の重要性を考える時、若い世代の参加が、是非とも必要である。今後の災害シンポジウムの形態についての一つの教訓としたい。

(d)成果の公表
2000年鳥取県西部地震-被災地日野町でのシンポジウムから-(2001):自然災害科学, 第20号,第3巻, 特集記事, pp.235-306.
CD-ROM、研究集会13K-1、鳥取県西部地震災害シンポジウム


(13K-2)マグマ活動と火山性地震・微動
開催日時:平成13年10月4日〜5日
開催場所:国民宿舎レインボー桜島
研究組織 
研究代表者
 西村太志(東北大学大学院理学研究科)
所内担当者
 井口正人(京都大学防災研究所 助教授)
参加者:48名

(a)背景と目的
 火山性地震・微動は、火山活動に伴い多種多様な波形と発生様式を持つ。ここでは、火山性地震・微動の活動とマグマ活動との関連性を明らかにするために、近年記録された日本各地の火山の地震波データ及びその解析結果を比較検討し、地震・微動の発生条件とマグマ活動との関係を調べる。

(b)討議または発表テーマ
 研究集会で発表されたテーマは、大きく分けて次の7点である。
(1)阿蘇火山の微動に関する研究
(2)有珠山2000年噴火に伴う火山性地震・微動の研究
(3)岩手山の地震活動からみたマグマの貫入
(4)三宅島2000年噴火に伴う火山性地震・微動の研究
(5)桜島火山の爆発地震に関する研究
(6)草津白根山の低周波地震
(7)海外の火山性地震

(c)成果の概要
阿蘇山、有珠山、草津白根山、岩手山、三宅島、伊豆大島などの日本の活動的火山のほかに、ハワイやインドネシアの活動的火山で発生した火山性地震や微動についての最新の研究成果が発表された。人工地震や自然地震を使った3D構造を用いることで火山活動を理解する上で不可欠な高分解能の震源分布の推定ができることが実証された。さらに、地殻変動源の比較により、微動の発生域はマグマ性流体の活動域と時空間的に相関が高いことが明らかとなった。多点広帯域あるいは高密度観測データの波形解析からは、精度の高い火山性地震の発震機構解の決定により、地下マグマ性流体の運動や物理・化学的特性を推定できることが示された。さらに、地震や微動発生に伴う火山噴気や空気振動の測定から地下マグマ性流体との定量的議論を試みる研究なども報告された。今回の研究集会により、多項目観測データに基づいた精度の高いマグマ性流体の時空間的位置やマグマの物理的特性を加味することにより、より具体的な地震発生メカニズムが推定できることが実証された。

(d)成果の公表
「マグマ活動と火山性地震・微動」成果報告書,平成13年10月.
また、この報告書は防災研究所の下記のサイトからダウンロードできる。
http://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/~kazan/13k02/dpri13k-02.html


(13K-3)2001年琵琶湖プロジェクトシンポジウム
開催期間:2002年2月27日
開催場所:京都大学防災研究所(D1510室)
研究組織
研究代表者及び所内担当者
 田中賢治(京都大学防災研究所 助手)
参加者:19名

(a)目的
今年度の集中観測ならびに常設観測、数値モデル研究について報告するとともに、琵琶湖プロジェクトの場を使った研究計画、フラックスの面的観測に向けたフラックス研究会との連携等を議論する。

(b)討議及び発表テーマ
「'01琵琶湖プロジェクト集中観測期間の気象の概況」    高田望(日本気象協会関西支社)
「'01集中観測期間におけるソーダ観測の概要と結果」   岩田徹(岡山大学 環境理工学部)
林 泰一・筆保弘徳(京都大学防災研究所)
「数値気象モデルARPSによる'01集中観測期間の大気場の再現計算/データ同化テスト、SiBUCの導入」   田中賢治・相馬一義・中北英一 (京都大学防災研究所)
「森林常設観測の現状と今後の課題」 戎 信宏(愛媛大学農学部)
「物質循環を加味した分布型の流出シミュレーションモデル」     池田智美・清水芳久(京都大学大学院工学研究科)
「琵琶湖プロジェクトデータのXMLデータベース化について」  森山聡之(崇城大学工学部)
「均質な地表面上での不均質なフラックス分布の測定に関する研究/京大防災研共同研究に関する説明」 樋口篤志(名古屋大学・地球水循環研究センター)
「琵琶湖プロジェクトの今後の活動について」
次年度以降の方針
フラックス研究会との連携
琵琶プロで目指す最終プロダクトは?

(c)成果のまとめ
プロジェクト内外19名の参加者を得て、2001年夏期集中観測の中間発表、常設熱収支観測の現状と今後の課題、数値気象モデルによる領域4次元データ同化、物質輸送を含む流出モデル、琵琶湖プロジェクトのデータベースに関する報告が行われるとともに、今後の活動について議論された。2001年8月14日午前0時より8月15日午後9時まで典型的な夏型の気象条件において集中観測を実施し、GPSゾンデ、ドップラーソーダ?、乱流フラックス、常設熱収支観測(水田、森林、湖面、都市)等のデータが取得された。これらの集中観測データに加え、衛星データ、アメダスデータ、GPVデータ、数値気象モデルを交えて、盆地性局地循環あるいは湖陸風の特性、それに対するローカルな地表面フラックスの影響についての議論が開始された。メソスケール数値気象モデルARPSを日本域用に一部改良し、3段階のネスティングにより琵琶湖プロジェクト対象領域について1kmの解像度で数値シミュレーションが実現され、またARPSのデータ同化システムADASによりデータ同化実験も実施された。一方、流量の再現のみならず、環境微量汚染物質の媒体となるSSの計算も可能な流出シミュレーションモデルがテストされ、キャリブレーションの結果、流量の再現精度が極めて向上することが示された。また、琵琶湖プロジェクトで収集されたデータの有効利用を促進するためにweb上で公開していくことが合意された。その際にXML(eXtensible Markup Language)を用いてデータベースを構築することが提案された。XMLはテキストベースなので、多量のデータ公開には不向きであるがデータの内容そのものをweb上で公開できることがユーザーの拡大につながると期待される。琵琶湖プロジェクトはこれまで10年近くにわたり、地元の住民の方々の協力を得て活動を続けてきた。総合討論では、プロジェクトの成果を地元に還元する方法として公開講座や観測サイトの見学会等が提案された。また、フラックス研究会と琵琶湖プロジェクトが共同して、これまで実現できなかったフラックスの面的直接観測に向け、大気境界層理論、数値モデルも含めた観測戦略を今後も引き続き議論していくことが合意された。


(13K-4) 地震発生準備過程の物理と観測−最近の成果と今後の課題−
開催期間:平成13年11月14日〜15日 
研究場所:米子コンベンションセンター 
第7会議室
研究組織
研究代表者
 笠原 稔(北海道大学大学院理学研究科)
所内担当者
 梅田康弘(京都大学防災研究所 教授)
 大志万 直人(京都大学防災研究所 教授)
参加者:70名

(a)目的
 新地震予知研究計画で取り組んでいる地震発生準備過程の解明は、物理的モデルと観測結果との相補的検証が重要であり、新地震予知研究計画の基本戦略である。その最近までの成果について充分な討議を行うとともに、平成15年度以降の5ヵ年計画の中心課題を検討する。

(b)討議及び発表テーマ
11月14日(水)
1.東海地域の現状と今後の予測
「東海地域のGPSから見た最近の地殻変動」小沢慎三郎(国土地理院)
「地殻変動観測から検討する過去のスロースリップ」        木股文昭(名古屋大学 理)
「サイレント地震は震源核か?」川崎一朗(富山大学 理)
「東海地域推定固着域における地震活動変化」松村正三(防災科学技術研究所)
「地殻応力臨界現象としての東海地震とその発生予測」  五十嵐丈二・角森史昭(東京大学 理)
「2001年東海の異常地殻変動のTime-to-Failure解析」      河村 将(名古屋大学環境)山岡耕春(名古屋大学 理)
「バリアー/フラクタル アスペリティモデルにもとづいた東海地震発生予測」瀬野徹三(東京大学地震研究所)
総合討論
2.地震活動・不均質構造・低周波地震
「日奈久―布田川断層系の不均質構造について」松本 聡 (九州大学 地震火山観測研究センター)
「1997年鹿児島県北西部地震とその後の活動について」       後藤和彦(鹿児島大学 理)
「地震エネルギー開放量と地震再発性の時空間分布から見る地震活動」戸谷雄造(北海道大学 理)笠原 稔(北海道大学 地震火山センター)
「西南日本内陸の活断層に発生する深部低周波地震」     大見士朗(京都大学防災研究所)
「西日本で発見された地殻底部低周波微動」小原一成(防災科学技術研究所)
3.鳥取県西部地震はどの程度まで予測可能だったか?(その1)
「2000鳥取県西部地震地域の活断層調査」   井上大榮・宮腰勝義・上田圭一  (電力中央研究所)
「歪速度の小さいところで起きた鳥取県西部地震」    橋本 学(京都大学防災研究所)
「2000年鳥取県西部地震に先行した群発的地震活動と本震の破壊過程の関係について」澁谷拓郎(京都大学防災研究所),中尾節郎(京都大学防災研究所),西田良平(鳥取大学工),竹内文朗(京都大学防災研究所),渡辺邦彦(京都大学防災研究所),梅田康弘(京都大学防災研究所)
「西南日本の火山活動と地震波速度構造」木村純一(島根大学 理)
「鳥取県西部地震前の水平地殻変動:GPSデータの解析」  大淵智勝・河合研志・五十嵐丈二(東京大学 理)
11月15日(木)9:00〜12:10
4.鳥取県西部地震はどの程度まで予測可能だったか?(その2)
「山陰地方の地震活動と地震空白域」石川有三(気象研究所)
「山陰地方の深部比抵抗構造とその意味」大志万直人(京都大学防災研究所)          塩崎一郎(鳥取大学 工)
「2000年鳥取県西部地震震源域における反射法地震探査と稠密微小地震観測の成果概要」阿部信太郎・青柳恭平(電力中央研究所)
「断層トラップ波で震源断層を探る」西上欽也(京都大学防災研究所)
「稠密余震観測による2000年鳥取県西部地震震源域の3次元速度構造について」2000年鳥取県西部地震合同稠密余震観測グループ・澁谷拓郎(京都大学防災研究所)
「地震計アレイ観測による鳥取県西部地震震源域周辺の散乱体検出について」    松本 聡(九州大学 地震火山観測研究センター)
「鳥取県西部地震前後の近畿地方における地下水・地殻歪変化について」小泉尚嗣(産業技術総合研究所)
「Time-to-failureの鳥取県西部地震への適応」松村正三(防災科学技術研究所)
総合討論

(c)成果のまとめ
 平成13年11月14日、米子コンベンションセンターにおいて、平成13年度京都大学防災研究所研究集会(一般)、13K-4、「地震発生準備過程の物理と解釈―最近の成果と今後の課題―」(研究代表者:北海道大学院教授 笠原稔)を開催した。この研究会は、地震予知協議会にある企画部の「準備過程」研究推進部会主催の研究集会で、「準備過程」に含まれる研究課題の最新の成果を持ち寄り議論し今後の研究計画に反映させることを目的としたものである。そして、次の3セッション「東海地域の現状と今後の予測」、「地震活動・不均質構造・低周波地震」、「鳥取県西部地震はどの程度まで予測可能だったか?」を設け集中的に議論を行った。参加者の総数は70名を超えるものとなった。  特に「東海地域の現状と今後の予測」に関しては、2001年春から、東海地域でそれまでの傾向と反転する変動が進行していることが指摘され、緊急性の高い話題であると判断し、最終プログラム構成を考えた10月になってから設けたセッションであり、結果として、東海地域のさまざまな手法による今後の予測に関して成果を発表している研究者を一堂に会した初めての研究集会となった。過去にも同様の変動が発生していたことも明らかとなったが、「固着域」と呼ばれる領域内での地震活動の変化もあり、研究者により幅はあるが、全体として想定東海地震領域で、「準備過程」と呼びうるある方向性を持つ変動が進行しているとの認識で一致し、今後の実際の変動と提案されている各種変動シナリオが一致するかどうかを見極めていくことが重要であることが指摘された。
 また、「地震活動・不均質構造・低周波地震」でも、最近話題となっている低周波微動に関しての発表がありその成因に関しての議論があった。そして、「鳥取県西部地震はどの程度まで予測可能だったか?」では、鳥取県西部地震に関する話題も現在進行している各種の調査研究のホットな情報が紹介され、今後の解析によって地震発生域の構造の特徴抽出の期待を抱かせるものであった。

(4)成果の公表
CDで報告書作成


(13K-5)最新の風洞実験法に関する比較研究
開催日時:平成13年12月21日
研究組織
研究代表者 
 野村卓史(日本大学理工学部 教授)
所内担当者 
 河井宏允(京都大学防災研究所 教授)
参加者数:62名

(a)背景と目的
近年、非定常流れ場や温熱場を制御できる新しいタイプの風洞の開発と、それを用いた基礎及び応用研究が盛んになってきている。本集会では、これら最新の風洞を実際に用いて実験・研究を行っている研究者、実務者を中心に、各分野での研究成果や情報を交換し、風洞実験法に関する比較・検討を行うものである。

(b)討議または発表テーマ
・温度成層風洞を用いた複雑地形上の排ガス拡散風洞実験
・温度成層風洞を用いた大気境界層のシミュレーション
・境界層内の水の相変化を考慮した風洞実験
・温度成層風洞に用いた温水式温度成層装置の調整経過について
・大気安定度が市街地の流れ場拡散場に与える影響について
・不安定大気境界層中の排ガス拡散および濃度変動の風洞実験
・大気安定度を考慮した排ガス拡散風洞実験
・建築研究所火災風洞の概要と火災風洞実験の紹介
・防災科学技術研究所雪氷防災実験棟の低温風洞について
・大型水風洞設備の概要
・物体まわりの流れと風圧の同時計測-PIVと多点風圧計測
・風洞実験用磁力支持天秤装置の研究
・航技研60p磁力支持天秤装置の現状
・アクティブ乱流発生風洞を利用した構造物の空力応答に関する研究
・AC サーボモータ送風機による風速風向変動の生成と空気力測定
・マルチファン型風洞の風速アクティブ制御と乱流生成
・全方位風向風速変動風洞と強乱生成押し込み風洞の構想

(c)成果の概要
本集会には、建築、土木、気象、電力、航空、機械などの幅広い分野から、北は北海道から南は九州まで60余名の研究者及び実務者の方々が参加され、17編の研究発表が行われた。温度成層風洞、火災風洞、雪氷風洞、大型水風洞、アクティブ乱流風洞、風向風速変動風洞、磁力支持天秤など、既存の風洞や計測装置の枠を越えた新しい発想法による風洞と風洞実験方法が紹介され、日頃の実験の苦労や工夫などを含めて活発な意見交換がなされ、風洞に使って研究を進めている研究者にとって大いに参考になるとともに、21世紀における風洞と風洞実験の役割を認識し、風洞による研究の発展への展望を開くことができた。と同時に、今後の研究や研究者間の繋がりを作る上でも非常に役に立つ貴重な機会が提供できた。
なお、本研究集会に関連して、風洞を利用して研究を行っている各研究機関に風洞についてのアンケートを実施し78の機関から回答をいただいた。アンケート結果は製本し「最新の風洞実験法に関する比較研究−資料日本の風洞」として、関連の研究機関に配布した。

(d)成果の公表
研究集会(一般)報告書「最新の風洞実験法に関する比較研究」
同資料集「日本の風洞」


(13K-6)歴史的山地災害の統一ドキュメンテーションのための国際ワークショップ
開催日時:平成13年8月29日〜9月2日
開催場所:
長野県白馬村プチホテル・バク(30日)
同県王滝村名古屋市民休暇村(31日、1日)
研究組織
研究代表者
 諏訪 浩(京都大学防災研究所 助教授)
所内担当者名
 奥西一夫(京都大学防災研究所 教授)
研究分担者
 Rodrigues, Savio Carlos(Univesidade Federal de Uberlandia(Brasil)助教授)
 Bognar, Andrija(University of Zagreb (Croatia) 教授)
 Lavigne, Franck(Universite de Paris 1 (France) 講師)
 Marre,Alain(Universite de Reims (France) 教授)
 Wassmer, Patrick(University of Strasbourg (France) 助教授)
 Kis, Eva(Hungrian Academy of Science (Hungary)助手)
 Loczy, Denes(University of Pecs (Hungary) 助教授)
 Schweitzer, Ferenc(Hungarian Academy of Science (Hungary) 助教授)
 Sunil, Kumar(Union Christian Training College (India) 助教授)
 Brancaccio, Ludovic(University of Molise (Italy) 教授)
 Balteanu, Dan(Romanian Academy (Romania) 教授)
 Dinu, Mihaela(Romanean Academy (Romania) 助手)
 Brunengo, Matthew(Geo Engineers Inc.(U.S.A.) 主任研究員)
 Dunne, Thomas(University of California at Santa Barbara(U.S.A.) 教授)
 井上公夫(鞄本工営 副技師長)
 小林 詢(信州大学理学部 教授)
 小林武彦(富山大学理学部 教授)
 竹内 章(富山大学理学部 教授)
 原 義文(国土交通省多治見工事事務所 所長)

(a)背景と目的 
 IDNDRの山地災害研究プロジェクトの第4回集会(略称DOMODIS)を日本で開催することを強く要望されていたが、2002年に松本で開催される国際砂防シンポジウム(略称Interpraevent)に併せて同市で開催された。通常は野外巡検が併催されるが、2002年には開催予定がなかったので、2001年に東京で開催の第5回国際地形学会議に併催される野外巡検のうちの山地災害の野外巡検をこれに当て、海外からの参加者の研究発表と、現地巡検内容を核として本研究集会で討論を行うこととした。

(b)討議または発表テーマ
8月29日(水)
巡検地と討論内容
1.小土山地すべり
2.真名板山の大規模崩壊地形
3.蒲原沢の土石流と災害
4.清水山地すべり
5.姫川流域の活構造地形と土砂流出の関連
17:30 - 18:30巡検地の災害地形に関する討論
8月30日(木)
巡検地と討論内容
1.金山沢(稗田山崩壊、金山沢の崩壊、地すべり、土石流)
2.唐松沢(大規模崩壊・地すべりと土石流)
3.浦川(稗田山崩壊による岩屑なだれ、砂防事業)
18:20 王滝村名古屋市民休暇村着:巡検地の災害地形に関する討論
8月31日(金)
巡検地と討論内容
1.御岳崩れ崩壊源(地質・地形条件)
2.御岳崩れ対岸の土砂流動と堆積地形
3.伝上川の土石なだれ
4.御岳高原の崩壊地形と地質
5.御岳火山の地質と地形
15:50 名古屋市民休暇村着:巡検地の災害地形に関する討論と海外研究者の発表・討論
9月1日(土)
巡検地と討論内容
1.伝上川・濁川・王滝川における岩屑なだれの流動
2.天然ダムの状況
3.御岳崩れの前後、およびその後の河床変動
3.松越の崩壊
16:30 名古屋市民休暇村着:巡検地の災害地形に関する討論と海外研究者の発表・討論
9月2日(日)
巡検地と討論内容
1.木曽川泥流の堆積物
2.滑川の地質・地形要因
3.滑川における土石流観測と土石流制御
15:36 塩尻発(あずさ82号)18:20 新宿着(車中で討論)

(c)成果の概要
 姫川流域は地殻変動が激しい日本の中でもとくに地盤の上昇速度が大きい地域である。その上、地質的に脆弱なため、地表の侵食速度が著しく大きい。すなわち、地すべりや斜面崩壊、土石流などの斜面変動による災害は、その規模、空間的密度、および頻度において、世界に類を見ないものである。また御岳地域は、数万年オーダーの地質学的過去において巨大規模の斜面崩壊を起こしている。その時の岩屑なだれの一つは木曽川泥流と呼ばれていて、下流数十キロにわたってその堆積物の露頭を観察することが出来る。近年の例としては、1984年の長野県西部地震の際に、規模はそれらよりは小さいが、やはり巨大規模の斜面崩壊による岩屑なずれが発生している。すなわち、火山地域の大規模地形災害の典型例が見られる地域である。国際地形学会議に参集した世界各地の地形学研究者にこのような2つの地域における地形変化過程とそれに伴って発生する地形災害および防災対策の現状を視察していただいた。そして各研究者はそれとの関連において、自国の地形災害に関する研究発表を行い、互いに意見を戦わした。このような機会は極めて貴重なものであり、本研究の目的とする国際的に統一された山地災害のドキュメンテーションの実現のための大きなヒントを与えるものであった。

(d)成果の公表
 Workshop on the worldwide documentation of historical mountain disastersと題する冊子体の報告書を提出し、また関係者および機関など一般に配布した。


(13K-7)フィリピン海スラブの沈み込みと島弧・背弧の地球物理
開催日時:平成13年10月9日13時〜10日17時
開催場所:京都大学化学研究所
共同研究棟 大セミナー室
研究組織
研究代表者
 中西一郎(京都大学大学院理学研究科 助教授)
所内担当者
 大見士朗(京都大学防災研究所 助手)
参加者数:96名

(a)背景と目的
 (i)フィリピン海スラブ(若いスラブ)の沈み込みに伴う物理・化学的な素過程を調べる。例えば、スラブおよび海洋性地殻の(dehydration) melting。(ii)南海道・東海道地震の発生場の構造を調べる。(iii)スラブ沈み込みと火山活動の関係を調べる。これまでの火山(マグマ)成因論(東北日本用)では西南日本の火山活動を説明できない。研究集会では(i)、(ii)、(iii)に関する最新の研究に関する発表と議論、情報交換を行った。

(b)討議または発表テーマ
以下に研究会のプログラムを記す。
10月9日13:00 〜 17:00
1.フィリピン海プレートのテクトニクス 
「フィリピン海スラブ沈み込みの境界条件とし ての東海・南海巨大地震のレビューと西南日本東進説」  石橋克彦(神戸大学都市安全研究センター)
「フィリピン海プレート北縁部に見られる6Maと 2Maの広域テクトニクス転換の重要性」 鎌田浩毅(京都大学総合人間学部)
「西南日本、メキシコ、カスケーディアの類似 性とスラブ浅部地震」 瀬野徹三(東京大学地震研究所)
「Korea 地域の地震・火山活動と東アジアの テクトニクス」 張 泰雨(慶北大学地質学部) 大内 徹(神戸大学都市安全研究センター)
「南海トラフの地震サイクルと地殻変動:GPS データに基づく回顧」   鷺谷威(国土地理院)
「フィリピン海スラブの先端について」  中西一郎(京都大学大学院理学研究科)
「地震波トモグラフィーから見たフィリピン海 スラブ」            趙 大鵬(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)
「西南日本内陸活断層に発生する深部低周波地 震」     大見士朗(京都大学防災研究所)
「地震活動と海底活断層から見た南西沖縄トラ フのテクトニクス」 中村衛(琉球大学理学部)
「沖縄トラフ(台湾当方-九州西方)と南西諸島 島弧の浅発地震のメカニズム決定と周辺の変形場」         久保篤規・福山英一 (防災科学技術研究所)
「桜島とその周辺の地殻変動」  上野邦治ほか(鹿児島大学理工学研究科)
「広域地殻変動と九州南部地方の地殻変動の関係」   田中 穣(鹿児島大学理工学研究科)
「西南日本におけるスラブ内地震と地殻内地震の 起震応力の相関について」    三好崇之(神戸大学自然科学研究科) 石橋克彦(神戸大学都市安全研究センター)
「フィリピン海スラブ内の応力分布」 山崎文人(名古屋大学大学院理学研究科)
10月10日9:00 〜
3.平成13年芸予地震 「四国の地震と2001年芸予地震」 木村昌三(高知大学理学部)
「平成13年(2001年)芸予地震の地震活動」 橋本徹夫・細野耕司(気象庁地震火山部)
「2001年芸予地震の余震分布とフィリピン海スラ ブ内で発生する地震活動」 永井 悟・平田 直(東京大学地震研究所)
4.フィリピン海プレートの構造の研究 (その1)
「フィリピン海プレート背弧部の電気伝導度構 造」       半田 駿(佐賀大学農学部)
「短周期地磁気時間変化異常から見た九州西方マ  ントル上昇流」    藤浩 明・本間佐和子(富山大学理学部地球科学科) 藤原 智(国土地理院)
「山陰地方の深部比抵抗構造‐鳥取県東部地域に  着目して-」   塩崎一郎(鳥取大学工学部) 大志万直人・笠谷貴史(京都大学防災研究所) 西山浩史((株)国土防災技研)
「九州中部地域の火山と中国大陸東北部の火山下  の熱構造の比較」   江原幸雄・藤光康宏・ 西島 潤(九州大学大学院工学研究院)
「構造探査結果から推定したフィリピン海プレー  トの形状と1946年南海地震のすべり量分布」  馬場俊孝(海洋科学技術センター)「震源分布から見たフィリピン海スラブの形状」        石川有三(気象研地震火山研究部)
「九州南北測線の地殻構造探査から推定される多重付加体の構造」  安藤 誠・森谷武男 (北海道大学大学院理学研究科) 岩崎貴哉・吉井敏尅・武田哲也・ 林 成実・酒井慎一・飯高隆 (東京大学地震研究所) 久保篤規(極地研究所)
宮町宏樹(鹿児島大学大学院理工学研究科)田代勝也・松島健・鈴木貞臣(九州大学大学院理学研究院) 「海底地震計を用いた九州背弧の地殻深部構造調査」  中東和夫ほか(東京大学地震研究所) 10月10日13:15 〜
5.フィリピン海プレートの構造の研究(2)
「地震トモグラフィーによる、九州・琉球島弧の背弧深部構造について」 鈴木貞臣(九州大学大学院理学研究院)・ホセインサデキ(イラン)竹中博士(九州大学大学院理学研究院)
「エアガン探査を用いた甑島西方海域の浅部P波速度構造」           水原健太郎(鹿児島大学大学院理工学研究科)
「3次元地震波探査によって明らかになった四国沖南海トラフ沈み込み帯の巨大地震発生帯」倉本真一(産業技術総合研究所)
「南海トラフにおけるフィリピン海プレートの沈 み込み構造-マルチチャンネル反射法地震探査の結果-」 朴 進午(海洋科学技術センター)
「稍深発地震の地震記録中に見られる変換波を用いた九州地方における変換面の推定」中村めぐみ・ほか(九州大学大学院理学研究院)
「四国西部〜九州における稍深発地震から推定されるフィリピン海スラブの形状とスラブ内応力場」            植平賢司ほか(九州大学大学院理学研究院)
「P波異方性からみたフィリピン海プレート」石瀬素子・小田 仁(岡山大学大学院自然科学研究科)
「四国およびその周辺におけるフィリピン海プレート上面の構造」大倉敬宏(京都大学大学院理学研究科)
「レシーバ関数解析による四国とその周辺域の地殻およびスラブ構造」澁谷拓郎(京都大学防災研究所)
6.総合討論

(c)成果の概要
 研究集会では、上記(i)、(ii)、(iii)を中心に研究会の開催趣旨の説明を代表者(中西一郎)が行い、プログラム(上記(b)参照)に従って研究発表および議論を行った。また研究集会2日目の最後の1時間半を用いて、(i)〜(iii)および2日間の発表・議論で話題になり、決着が付かない問題についての総合討論を行った。ここではこの総合討論の話題を中心にまとめる。
(1)震源決定について。地震学の最も基本的かつ重要な作業でありながら、ふだん話題に上がることの少ない。震源決定精度および機関・研究者間での震源決定結果の系統的違いが問題として取り上げられた。具体的には、芸予地震の余震分布、フィリピン海スラブのセグメント化等の発表の際に議論になった。
(2)上の問題を考慮、解決しながら、発表者の数人で今後フィリピン海スラブのstandardなseismic等深度面を作成することになった。
(3)鷺谷威氏(国土地理院)からpreliminaryなaseismic slab上面の等深度面を作成することが提案された。作成作業中。
(4)背弧の構造について。地震学的にLow V のところが電磁気学的にはLow Rにならない例が示され、議論された。背弧にある火山の分布がスラブとは対応しなく、これまでの東北日本弧用の火山成因論が破綻していることが明らかになった。
(5)低周波地震について。横山博文氏(大阪管区気象台)から詳しい説明が行われた。趙大鵬氏(愛媛大学)から脱水と地震発生に関するコメントが述べられた。
(6)他にも多くの重要な問題が議論されたが、ここでは省略する。詳しくは成果報告書を参照して頂きたい。
(7)今回の研究集会では非常に多くの具体的な研究課題が浮き彫りになり、発表者は研究の問題点とその解決へのヒント、参加者は研究テーマを持ち帰ることが出来たと思われ、その意味で研究集会開催の意義はあったと考えられる。

(d)成果の公表
成果報告書「フィリピン海スラブの沈み込み島弧・背弧の地球物理 Physics of Arc and Backarc Associated with the Subduction of the Philippine Sea Plate」を刊行し、配布した。


(13K-8)ヒル谷試験流域の土砂流出環境を読む
開催日:平成13年10月11日〜13日
開催場所:穂高砂防観測所
研究組織
研究代表者
 池田 宏(筑波大学地球科学系 助教授)
所内担当者
 澤田豊明(京都大学防災研究所 助教授)
研究分担者
 伊勢屋ふじこ(上武大学商学部 教授)
 井口 隆(防災科学技術研究所 主任研究員)
 板倉安正(滋賀大学教育学部 教授)
 小野寺 真一(広島大学総合科学部 教授)
 岡松香寿枝(国土地理院地理情報解析研究室 研究員)
 小杉賢一郎(京都大学大学院農学研究科助手)
 小玉芳敬(鳥取大学教育地域科学部 助教授)
 小松陽介(筑波大学陸域環境研究センター助手)
 佐藤 浩(国土地理院地理情報解析研究室 研究員)
 里深好文(京都大学防災研究所 助手)
 下島榮一(大同工業大学建設工学科 教授)
 園田美恵子(京都大学防災研究所 研究員)
 寺嶋智己(森林総合研究所 主任研究員)
 中川 一(京都大学防災研究所 助教授)
 藤田正治(京都大学大学院農学研究科 助教授)
 真板秀二(筑波大学農林工学系 助教授)
                  他5名

(a)研究の背景と目的
流域からの土砂流出を長期的・広域的に予測するためには、地形を見る目が必要である。これが平成12年度の研究集会における結論の一つであった。そこで、山岳流域を共に実地調査して、山から海までの土砂礫の流れを読むための時間の目と比較の目を学ぶことを目的としている。

(b)研究の方法
本研究会では、京都大学防災研究所付属災害観測実験センターの穂高砂防観測所のヒル谷試験流域を研究分野の異なる地形学、河川工学、砂防工学の研究者が共に歩いて、地形・水文・植生・土壌・土砂流出などの諸特性からヒル谷流域の土砂流出環境を多面的に読むことを試みた。
 日:平成13年10月11日〜13日
 場所:穂高砂防観測所
プログラム
第1部:11日午後3時〜5時 研究発表
「土砂流出環境変化を地形から読む」 (池田 宏)
「足洗谷・ヒル谷の地質条件と地形変化過程」(小松陽介)
「足洗谷・ヒル谷からの土砂流出観測30年」(澤田豊明)
「ヒル谷の降雨流出過程」     (下島榮一)
第2部:11日午後7時〜9時
「ヒル谷における斜面水文過程」 (小杉賢一朗)
「ヒル谷における現在の土砂動態」 (藤田正治)
「流域レベルの土砂輸送把握における地形学的アプローチ」          (真板秀二)
「森林・植生の有無と地形プロセス」(園田美恵子)
第3部:
12日午前8時30分〜午後5時
ヒル谷現地巡検    (池田 宏・澤田豊明)
12日午後7時〜9時 研究発表
「DEMによる雲仙普賢岳・水無川上中流域における地形変化特性の把握」    (佐藤 浩)
「土砂災害における地理的条件と景観生態学的考察」             (国松香寿枝)
「土砂移動モニタリング」     (板倉安正)

(c)研究成果の概要
ヒル谷流域を歩き、総合的な討議を行った。その結果、ヒル谷の流域の下流部に広がる傾斜角14°ほどの緩斜面の発達について、新たな知見が提案された。視点を点から線へ、さらに線から面へ広げて流域の成り立ちを見ようとする本研究集会ならではの新たな成果といえよう。今後はこのような流域の地形発達史の理解に基づいた水文流出過程の理解が期待される。また、これらの流域は他の流域と同様、予想以上に早い速度で変化しつつある事が明らかとなった。

(d)成果の公表
防災研究所,一般研究集会(13K-8)報告書,代表者池田 浩,平成14年3月, pp.1-75.


(13K-9)アジア地域における地域開発が水文循環に及ぼす影響に関する研究
開催日時:平成13年11月2日
開催場所:京大会館
研究組織 
研究代表者及び所内担当者
 岡 太郎(京都大学防災研究所 教授)

(a)背景と目的
アジア地域には、発展途上国よりG7国まで様々な水文形態を有する国や地域が存在している。したがって、開発と水資源保全に関する考え方にも差が生じている。また、国際河川も多い。
 各国・地域における水と人間生活との係わり合いを明確にし、開発に伴う水文循環と水資源への影響を明らかにする必要がある。本研究集会では、海外調査の経験を有する研究者の参加を得て、アジア地域における開発に伴う水文循環への影響及び環境に配慮した水資源開発のあり方を考究する。

(b)討議または発表テーマ
プロジェクト研究報告:
岡 太郎・神野健二・他10名:地下水の利用と保全 ?地下ダムの設計と運用管理?
友杉邦雄・葛葉泰久:異常少雨現象の特性と予測に関する研究 
田中賢治・中北英一・池淵周一:琵琶湖プロジェクト
一般研究フォーラム:
東 博紀・岡 太郎:植物の成長に伴う蒸発散の変化を考慮した土壌中の水・物質移動
浜口俊雄:地下水の時空間統計学的推定手法の開発と平面地下水流動モデルへの応用
鈴木善晴・中北英一・池淵周一:降雨の3次元分布構造と地形依存特性に関する研究   
Seung-Hwan Sa・Yoshinobu Kido・Yoshihiko Hosoi ・Takanori Masuda :POLLUTANT RUNOFF CHARACTERISTICS FROM SMALL WATERSHED IN LAKE BASIN
葛葉泰久・友杉邦雄・岸井徳雄:降水量の空間相関構造と代表性
田中賢治・坪木和久・池淵周一・椎葉充晴:JSM?SiBUCによる梅雨前線の数値シミュレーション
国際学術調査研究:
近藤昭彦・オノラ ルンツヌウ:モンスーンアジアの水文地域      
吉野文雄:サヘル地域の河川流量および降雨量の長期変化 
大石 哲:アジア・太平洋地域水文学研究の諸相 
岡 太郎・井口真生子:バングラデシュ北東地域における氾濫湖の消長に関する調査研究  
嶋田 純・他7名:中国河北平原における近年の地下水状況変化と地下水流動について

(c)成果の概要
 本研究集会は、水資源研究センターが毎年開催する「水資源セミナー」と合同で開催された。
水資源研究センターでは8課題のプロジェクト研究を実施している。はじめに、地下水の利用と保全、異常少雨現象の特性と予測、琵琶湖プロジェクトに関する研究の進展状況が報告され、今後のセンターの進むべき方向が討議された。
次に、一般研究フォーラムでは、植物の成長と蒸発散・土壌中の物質移動、地下水の時空間統計学的推定手法の開発、降雨の3次元分布構造と地形依存特性、小流域から汚濁物質流出特性、降水量の空間相関構造と代表性、JSM-SiBUCによる梅雨前線の数値シミュレーションなどの研究成果が報告され、水文・水資源分野における貴重な情報交換が行なわれた。
最終セッションでは、モンスーンアジアの水文地域特性・地域別水資源利用可能量の評価、サヘル地域の河川流量や雨量の長期的な変動、中国河北平原での地下水流動の過去30年にわたる変化、バングラデシュの住民生活に恵みと災いをもたらす氾濫湖の消長など、主としてアジア地域における地域開発が水文循環に及ぼす影響に関する研究結果が報告された。これらの研究は、水利用と水災害に及ぼす影響を水文気象データに基づいて解析し、将来的な水資源問題を予測するための基礎的な知見と解析方法などについて幅広く検討されたものであり、国際援助や技術協力に貢献することが期待される。さらに、アジア・太平洋地域における水文気象研究を進める上での国際協力体制のあり方についての経験が報告され、今後の国際協力研究のための重要な情報が提供された。
(d)成果の公表
講演概要集を作成して配布するとともに、体裁等を整えて水資源研究センター発行の研究報告に掲載し、研究成果を公表した。

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