UNITWIN事業


 ユネスコ教育局高等教育部が推進するUNITWIN計画は、University twining and networkingの意味であり、世界中の異なる地域の大学及び高等教育機関の教授、研究者、管理者が共同活動することで、相互間の密接な協力とネットワーク、その他関連する調整事項を通して、迅速な知識移転を促進することにより能力開発、人材育成への促進に資することを目的としている。


 本UNITWIN共同計画は「社会と環境に資するための斜面災害危険度軽減」をテーマとしており、地すべりに関する調査、実験、観測、解析、情報収集及び災害軽減に関する技術移転を目指すものである。1991年に佐々教授らが始めた中国華清池の地すべりの災害予測のプロジェクトや、2000年から始めたペルー・マチュピチュ遺跡の地すべり危険度評価のプロジェクトでは、同遺跡がペルーを代表する文化遺産と言うだけではなく、ユネスコ世界遺産の最も代表的なものであることから、ペルー国内だけではなく、広く世界的に注目されており、ユネスコ等の国際機関だけではなく、イタリア、チェコ、スロバキア等から地すべり専門家が本プロジェクトに参加してペルーの文化庁、自然資源庁、地質金属研究所、地球物理学研究所、クスコ大学等とともに国際的な研究交流、技術移転のためのフレームワークが形成されてきている。 さらに2002年からはUNITWIN network のうち、特にイタリアのグループが核となり、アフガニスタンのタリバンに破壊されたバーミヤンの石窟仏像の不安定性評価と対策工についての検討を日本の信託基金等を得て推進している。
 また、学際的である地すべり専門の季刊・フルカラー国際ジャーナル“Landslides”をICLが平成16年4月に創刊した(印刷、配本は独・SpringerVerlag社、写真参照)。これは地すべり(Land-slides)を扱う学問分野は地形・地質学、地形学、土質・岩盤力学、砂防学、地球物理学、水理・水文学、気象学、防災行政など多岐にわたっており、各種の地すべりに関する基礎的研究や応用的研究および最近の目立った地すべり現象の紹介を専門の学術誌上の共通の場で公表し、成果の国際的な交流を行い、学際的・総合的学問分野としての地すべり学の確立と発展を図ることを最大の目的とする。この“Landslides”の編集発行もUNITWIN共同計画のひとつの核となる事業である。ユネスコ、世界気象機関(WMO)、文部科学省、京都大学の支援を得て、アジア、中東、南米地域等の途上国における活発な地すべり研究機関に配布する予定であり、UNITWINネットワークの展開が期待されている。