研究集会(一般)、13K-4

「地震発生準備過程の物理と解釈
 ―最近の成果と今後の課題―」開催報告


 平成13年11月14日、米子コンベンションセンターにおいて、平成13年度京都大学防災研究所研究集会(一般)、13K-4、「地震発生準備過程の物理と解釈 ―最近の成果と今後の課題―」(研究代表者:北海道大学院教授 笠原稔)を開催した。この研究会は、地震予知協議会にある企画部の「準備過程」研究推進部会主催の研究集会で、「準備過程」に含まれる研究課題の最新の成果を持ち寄り議論し今後の研究計画に反映させることを目的としたものである。そして、次の3セッション「東海地域の現状と今後の予測」、「地震活動・不均質構造・低周波地震」、「鳥取県西部地震はどの程度まで予測可能だったか?」を設け集中的に議論を行った。参加者の総数は70名を超えるものとなった。
 特に「東海地域の現状と今後の予測」に関しては、2001年春から、東海地域でそれまでの傾向と反転する変動が進行していることが指摘され、緊急性の高い話題であると判断し、最終プログラム構成を考えた10月になってから設けたセッションであり、結果として、東海地域のさまざまな手法による今後の予測に関して成果を発表している研究者を一堂に会した初めての研究集会となった。過去にも同様の変動が発生していたことも明らかとなったが、「固着域」と呼ばれる領域内での地震活動の変化もあり、研究者により幅はあるが、全体として想定東海地震領域で、「準備過程」と呼びうるある方向性を持つ変動が進行しているとの認識で一致し、今後の実際の変動と提案されている各種変動シナリオが一致するかどうかを見極めていくことが重要であることが指摘された。
 鳥取県西部地震に関する話題も現在進行している各種の調査研究のホットな情報が紹介され、今後の解析によって地震発生域の構造の特徴抽出の期待を抱かせるものであった。

左: GPSデータから推定したプレート境界面における固着の分布(南東から見る)。
プレート境界面の深さ20km程度より浅い部分で固着が強く(黄色ないし赤い部分)、
陸側のプレートが西北西に引きずり込まれています。それより深い領域は固着が弱く
(緑ないし水色)なっています。固着の強い部分は将来発生する大地震の震源域になると考えられる。
地理院の鷺谷威氏による。
右:2001年春頃からの異常変動を説明するスロースリップ分布。地理院の小沢慎三郎氏による。
(地震予知研究センター 大志万直人)


一般研究集会13K-5

「最新の風洞実験法に関する比較研究」報告


 防災研究所一般研究集会13K-5「最新の風洞実験法に関する比較研究:研究代表者(野村卓史:日本大学)」は平成13年12月21日(金),防災研究所D570室において行われた。建築,土木,気象,電力,航空,機械など幅広い分野から,北は北海道から南は九州まで60余名の研究者及び実務者の方々が参加された。冒頭で,研究代表者の野村卓史先生(日本大学)が本研究集会の主旨について述べられた後,午前のセッションで5編,午後のセッションで12編の合計17編の研究発表が行われた。温度成層風洞,火災風洞,雪氷風洞,大型水風洞,アクティブ乱流風洞,風向風速変動風洞,磁力支持天秤など,既存の風洞や計測装置の枠を越えた発想法による新しい風洞や風洞実験が次々と紹介され,活発な討論が行われた。最後に,本研究集会の防災研究所側の取りまとめ役の河井から,参加者に対するお礼と本研究集会のまとめ及び21世紀に向けての風洞実験についての役割と展望について話があり研究集会を終了した。
 研究集会後に行われた懇親会にも30名以上の方々が参加され,日頃の実験の苦労や工夫などについて活発な意見交換がなされた。研究集会で紹介された風洞や風洞実験は,それぞれの分野では既に紹介されているものもあるが,このようにまとまって発表される機会はなく,参加者からは今後の研究や研究者間の繋がりを作る上で非常に役に立つ貴重な機会だったとの感想が数多く聞かれた。
 本研究集会に関連して,風洞を利用して研究を行っている各研究機関に風洞についてのアンケートを実施し78の機関から回答をいただいた。研究集会では,これらのアンケートをファイルにして参加者に回覧した。アンケート結果は製本し「最新の風洞実験法に関する比較研究−資料日本の風洞」として,研究集会の参加者に配布するとともに,アンケートにご協力いただいた研究機関に配布する予定である。
 なお,研究集会梗概集および資料日本の風洞については残部があるので,必要な方は大気災害研究部門耐風構造分野河井までご連絡下さい。
(大気災害研究部門 河井宏允)