福岡県西方沖地震の被害について


写真1 玄界島住宅エリアの遠景
 3月20日に発生した福岡県西方沖地震(M7.0)の被害調査を、3月25〜26日に防災科研EDMの新井洋氏および東工大大学院生の関口徹氏と行ったので報告します。

 玄界島は、今回の地震で最も大きな被害を受け、全島避難を余儀なくされた。島の面積は約1km2、平地の少ない山岳地形である。住宅は、写真1に示すように島の南東斜面および沿岸に集中している。住宅の被害は、沿岸低地で少なく、主に斜面で多く発生していた。山の中腹にある玄界小学校の教室の内部(写真2)、沿岸部の低地で鉢植え(写真3)を見ると、比較的整然としている。これから、地震動そのものは非常に激しいものではなかったと推測される。写真4に示すように斜面の盛土の擁壁(主に雑石積)が破壊し、それに伴う地盤変形で損傷した家屋(写真5)が多く見られた。島の斜面には、車の通れる道がほとんど無い。今回の地震で火災が発生しなかったのは、不幸中の幸いである。

 博多港では、埋立地で液状化が発生した。特に沖浜町では、液状化によって1m程度沈下して、岸壁のはらみだしが発生した(写真6)。百道浜周辺でも、液状化が発生し噴砂が見られたものの、構造物の被害は軽微だった。

 繁華街の天神近くの今泉地区では、構造的な被害は軽微だが、地震発生から6日後においても、ガス、水道が使用できないマンションもあった。建物設備に対しても耐震性の配慮が必要と思われる。また、大名・今泉地区では、落書きが多く見られた(写真7)。このような落書きは、住民が避難している時になされたと報道されている(西日本新聞3/25)。災害直後の治安も重要と思う。なお、玄界島では、入島時に身分証明書のチェックがなされていた。
(地震災害研究部門 田村修次)


写真2 玄界島小学校の校舎内の状況写真3 植木鉢(玄界島海岸近くの平地)
写真4 擁壁の崩壊(玄界島)写真5 擁壁崩壊と家屋被害(玄界島)
写真6 液状化に伴う岸壁の損傷
(福岡市沖浜町)
写真7 落書き(福岡市今泉地区)