京都大学防災研究所

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私たちはこんな研究をしています

「イメージング」より「インバージョン」:地震を分析する方法を比較

【「インバージョン解析」と「イメージング解析」の違い】

地震(時刻0秒に原点で発生:図中では黒点および赤点で表されている)の滑りが生じた時刻と場所を「インバージョン解析」(図中の右コラム)と「イメージング手法」(図中の左・中コラム)のそれぞれで推定し、「インバージョン解析」のほうが精度の面で優れた方法であることを示しました。

こんな成果を挙げています

地震の破壊伝播過程を推定する際に、最小二乗解(LSS; least square solution) に代表される「インバージョン解析」の方が、バックプロジェクション(BP: back projection)やハイブリッド・バックプロジェクション(HBP: hybrid back projection) に代表される「イメージング手法」よりも精度の面で本質的に優れていることを理論的に明確に示しました。
Fukahata, Y., Yagi, Y. and Rivera, L., 2014. Theoretical relationship between back-projection imaging and classical linear inverse solutions, Geophys. J. Int., 196, 552-559, doi:10.1093/gji/ggt392. (http://www1.rcep.dpri.kyoto-u.ac.jp/~fukahata/Papers/Fukahata14GJI.pdf)

こんなことに役立っています 

「イメージング手法」は基本的に観測データを足し合わせるだけで解が得られるため、逆行列の計算等が必要なインバージョン解析と比べ、数学的に簡便であるという特性を持っています。そのため、2004年のスマトラ地震以降、地震の破壊伝播過程を調べる上でイメージング手法(バックプロジェクション法など)が流行し、これまで地震の破壊伝播過程を推定するために使われていた「インバージョン解析」が時代遅れの古めかしい手法のように言われる風潮さえ出てきていました。しかし、イメージング手法は数学的に簡便であるため、地震の破壊過程を推定する上では致命的とも言える代償を支払っています。図で示したように、時空間上の一点で表される地震が(最も簡単かつ理想的な状況で計算を行いました)、インバージョン解析ではほぼ正しく求められている一方、イメージング手法では時空間的に大きく広がってしまっています。この論文を契機に、イメージング手法の世界的な流行は収まったように見えます。

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