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4.7.2 研究領域の活動概要

]X.宮崎観測所

  教授 古澤 保、助手 寺石眞弘

@分野の研究対象
九州東・南部地域の地震予知の研究

A現在の主な研究テーマ
 地殻変動連続観測および地震観測による大地震の準備過程における地殻活動の研究

B各研究テーマ名
(1)日向灘地殻活動総合観測線による地殻変動連続観測 (寺石眞弘、古澤保、大谷文夫、園田保美)
 昭和59年から宮崎観測所を中心に宿毛、槙峰、高城、串間、伊佐、大隅の7点よりなる日向灘地殻活動総合観測線を設置して、日向灘を中心に九州東・南部地域の地震活動と地殻変動を総合的に研究している。データはテレメータにより宮崎観測所に集中して集録している。全成分について1分値を光ディスクに記録し保存している。また、NTTのISDNディジタル公衆回線網を利用して宮崎観測所から宇治市の本所へ1日に1回全成分のデータを転送し、宇治本所での集録を行っている。
 長期間の地域の歪蓄積過程を明らかにし、地震発生に関係する異常変動検出のbackgroundともなる経年変動や季節変動について23年間のデータに基づき解析し、各観測点毎の特徴を明らかにした。これにより、平成8年10月19日と12月3日に日向灘で続けて発生したマグニチュード6。6の地震に際して、地震前の異常変動は観測されなかったが、長期変動では震源に最も近い宮崎観測所の経年歪変動率が平成7年9月から非常に大きくなり始め、地震後に一旦収まったが、平成11年以降再び増加していることが明らかになった。
 観測線各点の伸縮ひずみデータの相互相関による時間的・空間的相関解析の結果、平成7年の日向灘域での歪場変動が日向灘から九州内陸部に向かって90-140km/yearの速度で伝播していることが明らかにされた。

(2)測地測量に基づく広域地殻変動の検出(大谷文夫、寺石眞弘、園田保美、古澤保)
 宮崎観測所周辺と延岡市周辺に最長20kmの長距離光波測量基線網を設け、昭和56年以来定期的に改測を行い、連続観測データによる変動と調和的な広域変動を得ている。

(3)日向灘・九州東南部地域の地震活動(古澤保、寺石眞弘、森井亙、大谷文夫、園田保美)
 日向灘地殻活動総合観測線の各観測点に地震計を設置し、昭和52年以来地震観測を行っている。データは100Hzサンプリングで宮崎観測所にテレメータ伝送され、トリガー方式で集中記録されている。さらに南九州の地震検知能力と震源決定精度を高めるため、桜島火山活動研究センターと共同でパソコン通信を利用した地震観測網を展開している。
 九州南部の地震活動は日向灘に集中していたが、平成9年の鹿児島県北部地域のM6.3の地震以後この地域の活動が現在も続いている。日向灘地域の地震は北部・中部・南部にブロック分けされ、それぞれの地域で塊となって分布している。1996年の2つのM6.6の地震の後、余震活動は急速に減少したが、活動域周辺及び日向灘全域の活動は地震発生前の1.5倍の発生率となって活性化したままである。この地震活動の推移と宮崎観測所の歪経年変動率の変化が時期的に合致することが明らかにされた。
 大地震の震源破壊過程と歪変動の関係を調べる目的で観測線各点に強震計を設置し観測を開始している。

(4)観測計器の開発(園田保美、古澤保、寺石眞弘、大谷文夫)
 坑道内での高感度連続観測だけでなく、屋外での観測に実用的な感度を有する地殻変動観測計器として野外トレンチ観測用ハーフフィルド水管傾斜計の開発を行い、火山活動研究センターに協力して、インドネシア、グントール火山及び口永良部島の山頂部に設置し、地盤変形の連続観測を実施している。現在のところ、1マイクロラジアン以下の変動を十分検出可能な結果を得ており、火山活動の監視等への有効性を示す。

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