・研究集会名(番号) シェル・空間構造の自然災害時における
                  非線形挙動解明と抑止対策  (9Sー2)

  ・研究代表者  京都大学防災研究所   國枝治郎

・開催期間   平成9年10月17日

・開催場所   京都大学防災研究所

・参加者数   67名


 

概 要

共同研究集会を表題の下に開催する目的の背景を簡潔に述べると以下のようになる であろう。 (1) 近年いわゆる空間構造と呼ばれる建築物の建設が社会生活の進展、多様化にしたがっ て急激に増加している事実が背景にあり、この種構造物の安全性を確保する必要がある。 (2) 兵庫県南部地震時には教育施設、社会施設体育館における被害が軽微で被災者の避難 場所、宿泊所として震災後非常に役立ち、都市計画上この種構造物の適正な配置の必要 性が広く認識された。 (3) 空間構造にはコンクリート、鋼材(型鋼、棒鋼、ケーブル材)、木材、膜材等様々な 材料が用いられ、構造形式も使用材料に応じて様々であるため、安全性確保のための基 礎研究は多岐にわたる。 (4) 我が国では空間構造に与える自然災害因子として地震のみならず、風、雪等をも考慮 する必要があるため、(3)と相まって解決困難な課題が多い。 (5)建築学会等では空間構造に対してこれら災害因子に対応する設計指針が未だ作成され るまでには至っていない。また、世界的に見ても空間構造における自然災害時の研究は 進んでおらず、この方面では日本は指導的立場にあるといえる。  この研究集会によって地震、風、積雪等に対する空間構造の静・動的応答挙動を出来 るだけ明らかにし、抑止方法を討議する。  

成果のまとめ

 シェル・空間構造という重要だが建築構造関係にあってもかなり特殊な構造で且つ極 めて限られたテーマでの研究集会であって、集会そのものの成立が危ぶまれたが、多数 の参加者を得て非常に熱意のあふれた有意義な研究集会となった。この様な非常に限ら れたテーマでの研究集会は我が国では初めてのことであり、世界的に見ても無いであろ う。その成果を纏めると (1) 現状における当該方面の研究の進展状況を研究者、技術者共に十分に把握が出来て、 問題点の存在するところが非常に明確になり、今後の当該方面の研究の飛躍的発展に大 きく寄与した。 (2) 空間構造にあっては地震時下部構造の影響が予想されていた以上に大きいこと、特に 大規模構造では入力位相差が重要となる場合のあること、対称形でない支持方法の場合 の問題点等々が明確にされ、設計上の留意点が種々明らかにされた。 (3) 空間構造にあっても免震、制震機構が有意、有効に作動しうることが明らかにされた。 (4) 積雪時、特に偏載時における地震応答挙動が解明され、設計指針が与えられた。 (5) その他地震、風等による種々な状態の応答挙動、動的不安定挙動等の一部が解明され た。 (6) 応答挙動解析のための新たな有効な手法がいくつか提案された。 その他多面的に非常に多くの成果が得られたと参加者の間で合意されたが、これらの 成果を実設計に如何に反映させていくかが今後の問題であろう。