・研究集会名(番号) 都市地震防災のためのデータベース構築と
                 共有化の課題に関する研究集会  (9Sー1)

・研究代表者  京都大学防災研究所   亀田弘行

・開催期間   平成10年2月6日

・開催場所   京都大学防災研究所

・参加者数   31名


 

概 要

 本報告書は、平成9年度京都大学防災研究所共同研究集会9S-1「都市地震防災のた めのデータベース構築と共有化の課題に関する研究集会」における発表内容をとりま とめたものである。この研究集会は、平成7年1月17日に始まった阪神・淡路大震 災における情報課題を検証するとともに、課題を解決するためのデータベースの構築 やその基礎となる情報技術の問題点を整理することを目的として開催された。  阪神・淡路大震災は、都市基盤施設の激しい崩壊による影響と多様な社会的対応が 交錯する複合都市災害であり、そこに的確な情報収集・処理・共有の手段が欠如して いたことが、緊急対応と復旧・復興過程に種々の混乱を引き起こした。こうした問題 点は、震災発生後の2ヶ月間に文部省緊急プロジェクトとして実施された「兵庫県南 部地震をふまえた大都市災害に対する総合防災対策の研究」で行われた災害過程の構 造化の結果、物理的課題と社会的課題のインターフェースとして、情報課題が重要な 位置を占めるとの結論に至ったことにも示されている。  本研究集会では、震災発生から3年が経過した時点で、災害過程における実例をふ まえながら、防災情報課題関して行われた研究的な取り組みの成果を反映することを 目指した。プログラム構成は、(1)防災情報システムの課題、(2)災害情報収集 の技術・共有化の仕組み、(3)基盤データベースの内容・仕組みに大別し、これよ り、防災情報システムに求められる基本的な枠組、システムとデータベースの構築、 必要な技術的展開、実現のための協力体制などを検討することとした。  この研究集会を当初企画した平成8年の時点では、阪神・淡路大震災という膨大な 複合都市災害のデータを収集・保存し、広く共有化するためのデータベース化をどの ように達成できるか、その問題点は何かを討論することに主眼がおかれていた。しか しその後防災情報の課題については、災害データの問題にとどまらず、有効な防災情 報システムの基本概念や、その構築のために必要な空間情報の時間管理など、新たな 技術開発の必要性を含む多くの問題が提起されて、新たな展開を示してきた。この状 況をふまえて、実施プログラムの作成にあたっては、既存の情報技術の活用だけでな く、次代の技術的展開の方向付けを含む議論を可能とするよう心がけた。  研究集会は、京都大学防災研究所水資源研究センター演習室で実施され、参加者は 31名、14件の発表が行われた。発表者は大学の研究者6名のほか、行政ならびに 国の研究機関から3名、空間情報の基盤データベースに関わる企業の技術者4名、ラ イフライン事業者から1名からなり、多様な立場から、具体的な報告と提案を得るこ とができた。  ここで行われた討議はまだ緒についたところである。今後も個別の取り組みに加え て、今回のような横断的な議論の場を継続的に持つことが必要である。