・研究代表者 東京大学地震研究所 石井 紘
・所内担当者 住友則彦
・開催期間 平成9年11月18日〜平成9年11月19日
・開催場所 京都大学木質研究所木質ホール
・参加者数 78名
概 要
地下深い金鉱山は、地震予知と地震の震源過程、岩石の物性の解明のための巨大な岩石 実験場である。地表からの深さ2ー4kmで、震源のサイズ、10ー100mオーダーのサイ ズのイベント(マグニチュード3クラス相当の地震)が掘削による応力集中のため定常的 に繰り返し発生している。人間が直接に地震発生の場近くまで行くことができ、震源から 10m以内というような至近距離における観測も可能である。このように、深い鉱山では室 内の岩石実験的な計測が可能であり、脆性領域における地震破壊と岩石の物性を精細に調 べるためには、極めて貴重なフィールドであると考えられる。 すでに鉱山では人的被害軽減のため、実際に、地震の予測が行われていて、60%くらい の確率で大きめの地震を予測できるらしい(時間の誤差は数時間と言われている)このよ うに、深い鉱山における観測研究は、地震予知研究の新たな道を切り開く可能性の高い、 斬新なものであると考えられる。 南アフリカの金鉱山において、1993年より日本と南アフリカとの国際共同実験が行われ ている。採鉱の行われている坑道から100m以内、地震活動域のまっただ中において、地 震計、歪み計のアレイ観測が現在も行われている。比抵抗・自然電位の試験的観測も行わ れた。震源距離10m以内の地震も捉えられ、スケーリング則の研究などが行われている。 地震発生に関係した歪み変化も多数捉えられており、その中には、地震前の異常現象であ る可能性のある変動も含まれている。これらを詳しく観測研究することによって自然地震 の前兆としてどのような現象が期待されるかが明らかにされる。 これまでの研究成果と今後の研究方向を検討するため、表記の研究集会を平成9年11 月18日に木質科学研究所 木質ホールで行った。今回の研究集会は、南アフリカ金鉱山 関係、野島断層ボーリング関係、跡津川断層関係の3つのプロジェクト共催で、シンポジ ウム「震源に近づく」を行い、その中で南アフリカ金鉱山関係の論文発表を行った。成果のまとめ
1 ボアホール型歪み計で観測された歪み変化が地震活動と相関が良いことが分かった。 また、大きな地震前の異常な地殻変動が捉えられた。 2 鉱山の地震は自然地震から得られているスケーリング則と矛盾しない傾向を有す ることが分かった。応力降下量はやや大きい結果を得ている。 3 鉱山の地震にも、やや大きい目の地震の前には空白域が見られたり、震源域周辺に 発生する地震は低周波の傾向が見られる。また、初期破壊が見られることが分かっ た。