・研究代表者 名城大学理工学部 新井宗之
・所内担当者 澤田豊明
・研究期間 平成9年4月1日〜平成10年2月28日
・研究場所 京都大学防災研究所穂高砂防観測所・名城大学・滋賀大学
・参加者数 4名
土石流の流速観測には,従来ワイヤーセンサー方法が多く用いられてきた。こ れは土石流の発生・流動が突発的であり,多くが豪雨時で観測環境もかなり悪条 件下であるためデータ収集の確実性が求められたことに基づくものであろう。ワ イヤーセンサー方式は構造が非常にシンプルであるため信頼性は高い。しかし一 度使用すると再設定までにかなりの時間を要し、断続的な場合や、間欠的な現象 ではそれら全体を観測することが難しい。このため音響センサーや震動センサー などが用いられている。しかしこれらは設定が難しく誤動作が多いようである。 一方、観測施設や観測システムが整備されているところでは連続的な記録を行い 、突発的な発生に対応している。いずれの場合も近年その情報量の多さから映像 の記録を行っている。しかしこれらの映像記録による流速解析の手法は必ずしも 十分でなく改良の余地がある。そこで相関法を用いた画像解析手法の適用による 流速解析を行った。 この研究では相関法による画像解析と空間フィルターによる方法で検討した。 2画像間の任意領域の変位を得る画像解析手法としては、特定なマーカや個別粒 子を追跡する粒子追跡法や画像内のある領域の濃淡を用いて変位を得る濃度画像 解析法があるが、ここでは後者の方法でさらにその中で相関法による適応を行っ た。 穂高砂防観測所の観測流域(足洗谷流域)で渓流の表面流速測定を行った。こ こでは記録映像として高速ビデオ(200コマ/sec.)とデジタルビデオ(30コマ/sec) で行った。画像の安定性でデジタルビデオ(DV)がかなり優れていたのでDV映像を 解析に供した。そして画像解析の検証のため、河道の草を浮子として流し、表面 流速を測定した。画像解析において参照する領域(テンプレート)の大きさによ って解析結果が変化するが、ここでは15ピクセル四方以上の領域で安定した結 果を示し、浮子による流速結果とよい一致を示した。さらに中国・雲南省・蒋家 溝における土石流の映像データに適用し良好な結果を得た。ただしここでは解析 における参照領域は足洗い谷流域での適用結果を用い、映像のスケールが特定出 来ないため画像内の縮尺は試行錯誤的に決めている。これは今後の課題である。 現在は記録された映像を解析しているがコンピュータ等の処理速度の向上とあ いまってリアルタイム計測への適用をすすめる予定である。 これらの成果は国内の研究発表会や国際会議で発表あるいは発表予定である。