・研究代表者 京都産業大学一般教育研究センター 藤井 健
・所内担当者 石川裕彦
・研究期間 平成9年4月1日〜平成10年2月28日
・研究場所 京都大学防災研究所・京都産業大学一般教育センター
・参加者数 14名
(1) 目的・趣旨 1991年の台風19号は強い風を伴っていて、日本全土で68万棟もの住家に被害を与えた。もし前もっ て、災害発生域と災害の程度が予測されていれば、被害はかなり軽減されたものと考えられる。そこ で、本研究では、強い台風の本土接近中に、その後の風速分布を確率的に予測して、住家の予測被害 率の地理的分布を作成する。さらに、強風災害の予測をリアルタイムで行い、災害発生予想域に対し て事前に警告が可能なようなシステムを開発する。 (2) 研究経過の概要 1955年から1994年の40年間にわたって日本本土に上陸した51個の顕著台風について、台風の気圧場 の数値解析をやり直した。その結果から上陸時の中心気圧低下量と最大風速半径の間の関係が得られ た。また、解析により得られた気圧分布から算出した風と実測された地表風の間の風向偏角および風 速比について、風向に伴う変化を調和解析によりFourier級数の和で近似した。 また、一方では、平成9年12月9日には、研究集会「台風による風災害の研究」を開催し、気象学、 建築学、農学、損害保険の各方面の研究者から台風風災害の定量的予測に関する話題を提供してもら った。後日、その内容について、話題提供者から原稿を提出してもらい、本研究の報告書(冊子体) を作成した。 (3) 研究成果の概要 気圧場から算出した基本地表風を地形の影響を考慮に入れた地表風に換算する方法が得られた。ま た、中心気圧低下量から最大風速半径を求める経験式が得られた。これらの関係および1991年の台風 19号のさいの最大風速と住家被害率の関係を用いて、上陸2日前くらいから各地点の風向・風速を算 出していき、災害の定量的予測を行う台風強風災害予測システムの確立の見通しが得られた。 また、共同研究者からは台風の気圧場・風速場の解析とモデル化および風速と被害との関係につい て多くの知見が得られた。これらについては、台風強風災害予測システムに可能な限り取り入れて行 く予定である。