・研究代表者 岡山大学環境理工学部 大滝英治
・所内担当者 山下隆男
・研究期間 平成9年4月1日〜平成10年2月28日
・研究場所 京都大学防災研究所大潟波浪観測所
・参加者数 8名
研究目的・趣旨:大気中の二酸化炭素濃度が着実に増加している。二酸化炭素濃 度の増加のメカニズムを明らかにするためには、地球表面の大きな割合を占める 海洋が二酸化炭素の吸収に果たす役割を把握する必要がある。本研究の目的は、 京都大学防災研究所附属大潟波浪観測所の桟橋を利用して、大気−海洋間の二酸 化炭素の交換量を知ること、Webb et al. (1980)補正についての理解を深める ことである。得られた結果を報告する。 研究経過の概要:1997年8月22日〜24日、新潟県大潟町にある京都大学防災研究 所附属大潟波浪観測所の桟橋を利用して、大気−海洋間の二酸化炭素(CO2)の 交換量を測定した。桟橋は、海岸から250m沖に張り出し、先端部で横方向に100 m 展開している(T字型)。観測は桟橋の先端部で行った。測定場所での平均水深 は約8mであった。渦相関法センサ−(三次元超音波風向風速温度計、炭酸ガス・ 水蒸気変動計等)は海面上10mの高度に設置した。また、海面上1 mと13.4 mでの CO2濃度差、表面海水中のCO2濃度(pCO2)と海面上13.4 mの高さのCO2濃度差を測 定し、CO2フラックスを空気力学的傾度法とバルク法によって測定した。さらに、 岡山大学と九州大学で独自に開発されているpCO2測定器の比較を行った。 研究成果の概要:今回の結果で興味がある点は以下のことである。 1)Webb et al. (1980) の考えにしたがってCO2フラックスに寄与する3つの項 の大きさを評価した。変動法で測定した生のフラックス値は昼間約 -0.05 mgm-2s-1、 夜間は正の値で乱れが大きい。午前3時には最大値 1.4 mgm-2s-1を示した。また、 昼間における顕熱と潜熱による補正項の大きさは各々約 0.03 mgm-2s-1と0.06 mgm-2s-1であった。以上より、CO2フラックス(3つの項の和)は終日正となり、 CO2が海洋から大気中に放出されていたことを示した。バルク法の結果もCO2の上向 輸送を示した。上向のCO2輸送は、観測が海水温度が高い夏季に実施したことに起 因している。測定法によるフラックスの乱れは、使用した拡散係数やバルク係数の 値に問題がある。 2)8月24、25日の昼間、CO2(13.4m)がCO2(1m)より高濃度となり、空気力学的傾 度法のみがCO2の下向輸送を示した。CO2の勾配を測定した高度に問題があったのか もしれない。CO2のプロファイルを測定する必要がある。 3)岡山大学の測定器は少量の試料水中のpCO2測定、九州大学の測定器はpCO2の 高速測定を狙って開発された。pCO2値は最大30ppm程度の相違を示したが、両者の 時間的な変化傾向は良く似ていた。測定値を合わせるためには、pCO2の測定時間 を一致させるなど、明確な測定条件下での比較観測が必要である。