・研究代表者 弘前大学理工学部 田中和夫
・所内担当者 井口正人
・研究期間 平成9年4月1日 〜 平成10年2月28日
・研究場所 京都大学防災研究所桜島火山観測所及び弘前大学理学部附属地震火山観測所
・参加者数 4名
(1)目的・趣旨 噴火の発生機構把握のためには、各種火山性地震の発震機構の解明が不可欠である。P波 初動を用いた発震機構の研究は火口下深部に発生する地震に対しは有効な方法であるが、爆 発地震等浅部に発生する地震に対しては精度が低い。本研究の目的・意義は、震源近傍に設 置した中帯域地震計により微小地震の波形の長周期成分(近地項)を観測し、波形インバー ジョン法により爆発地震等の発震機構を求め、噴火の力学的モデルを構築することにある。 (2)研究経過の概要 平成9年6月〜10月の期間、桜島火山の火口の東側と南側の2カ所に中帯域広ダイナミック 地震計を設置し、爆発地震とB型地震を観測した。波形記録はトリガー方式で収録し、電話 回線により弘前大学の計算機に取り込み解析を行った。桜島火山観測所で決められたこれら 地震の震源要素を用い、波形インバージョン法により震源での応力分布を求めた。比較のた めの同種観測を、同10月に岩手火山において実施した。 (3)研究成果の概要 本研究において中帯域地震計により観測され、波形解析された爆発地震は5個、B型地震は 3個である。波形インバージョン法により、これらの地震の震源メカニズム解(モーメント テンソル解)を求めた結果、爆発地震、B型地震ともに non double couple(非双力源)成分 が卓越する体積膨張型に近いモーメントテンソル解が得られた。しかしながら、両者のモー メントテンソルの成分比を比較すると、爆発地震のMZZ成分(鉛直方向)はB型地震のそれ より顕著に大きく、またその絶対値も大きいことが明かとなった。この事実は、爆発地震の 発生が火口直下に作用する鉛直方向の外向きの応力に大きく依存していることを示している。 この結果はまた、爆発地震には対応する噴火が見られるが、B型地震にはそれに対応する表 面活動が見られないことと調和的であり、噴火は地震発生の際のMZZ成分の大きさによって 規制されていると考えらえる。 なお、岩手火山の観測では、観測期間中に解析できる地震が発生しなかった。