・研究代表者 京都大学防災研究所 河田惠昭
・研究期間 平成8年10月1日〜平成10年3月31日
・研究場所 京都大学防災研究所・京大会館
・参加者数 29名
(1)目的・趣旨 これまで、自然災害総合研究班によって、全国6地区の地区部会が構成され、災害の 地域性に関する研究が行われてきた。しかし、その研究の大部分の視点は、地域毎に 災害の特徴がどのように発現するかということであり、過去に起こった被災事例を資 料解析的に研究する方法が採られた。この方法によって、地域毎に災害の特徴が明ら かになった反面、同種の災害について地域間比較する作業が残されてきた。そのため に、災害の地域間の共通性についての知見は少なく、それが共通の災害対策の提案な どの遅れにつながっている。そこで、災害のネットワーク的研究体制を構築し、これ を活用して、都市における自然災害とその基本対策に関する共同研究を実施する。 (2)研究経過の概要 当初3年計画であったが、2年間の研究として行った。それぞれの年度末に全員が京大 会館に集まり討議したが、それまでには、土木学会海岸工学講演会、同全国大会、地 域安全学会講演会、日本自然災害学会講演会などを利用して、討議を継続させてきた。 初年度は、分担者が考えている地域の災害の問題の洗い出しを行い、次年度はそれへ の取り組みをどのようにすればよいかについて検討した。 (3)研究成果の概要 防災は優れて学際的な課題である。しかし、「学際的」の意味するところは決して明 確ではない。既存の学問分野の寄せ集めではだめで、個々の学問分野を相互に結びつ ける「共通言語体系」を構築することが必要である。すなわち、防災学の中心となる 学問分野は決まっておらず、ある学問分野もほかの学問分野と関連するネットワーク を構成しており、一つのプログラムを構成している。つまり、ある学問分野の成果が ほかの分野の境界条件あるいは初期条件になる。したがって、このレベルの情報を共 通言語化することが重要である。本共同研究によって共同研究の候補課題が多く提案 されており、そのいずれもが既存の学問領域からのアプローチでは不十分であること が確認された。とくに、国際的な災害調査ネットワークをどのようにして作るのか、 南海、東南海地震津波による広域被害対策を進めるための研究体制づくりをどのよう にして実現するのかについて集中討議され、その実現のために科学研究費に応募する ことが提唱された。