・研究課題名(番号) メゾ異常気象現象の数値シミュレーション (8Pー5)

・研究代表者  京都大学防災研究所   植田洋匡

・研究期間   平成8年10月1日〜平成10年3月31日

・研究場所   京都大学防災研究所

・参加者数   43名


<研 究 報 告>

  本研究は、現在気象庁の数値予報が対象としている20km格子よりもさらに細かい
1km程度の分解能でのメソ気象予報を行う数値モデルを実用化し、集中豪雨、竜巻、
突風などのメソ異常気象の予測につながる数値シミュレーション手法について研究す
ることを目的とするものである。米国オクラホマ大学のCAPS (Center for Analysis
and Prediction of Storm)で開発された数値予報モデルARPS (Advanced Regional
Prediction System) と米国YSA社の山田哲司博士が開発したメソスケール気象モデル
HOTMACを導入し、データベースを含めた計算環境の整備、いくつかの事例への摘要研
究を共同研究者で分担して実施してきた。また研究集会を平成8年度に3回、9年度に
2回開催し、モデル開発者による講演、情報の共有と成果の検討を逐次行った。
 ARPSを用いた研究では、まず国土地理院の国土数値情報に含まれる標高データをモ
デルに導入するためのインターフェースの作成、地表面パラメータ算出に必要となる土
壌・植生データベースの調査を行った。次に、海陸風循環と内部境界層の発達、地峡に
おける風速の強化を例題にモデルの性能検証を行った。また、北九州を対象に実地形を
入れた計算を行い、地形解像度と計算結果の関係について調べた。さらに、1997年
8月7日の箕面の集中豪雨のシミュレーション、石狩湾周辺地域での摘要計算を実施し
た。中国西北部で発生するダストストームのシミュレーションも試みた。
 HOTMACを用いた研究では、肘川あらしのシミュレーション、京都市北部での局地循
環と大気拡散のシミュレーション、複雑地形上での強風と乱流のシミュレーションを実
施した。
 2年間の共同研究により、モデルの運用環境が整備され、日本の地形情報を用いたシ
ミュレーションを行う体制ができた。しかし、摘要計算の結果は必ずしも満足できるも
のではなく、特に降水の予報を精度良く行うためには、基本場の温位や比湿の鉛直分布、
擾乱の初期場の情報を精度良く与える必要があることが示唆された。今後は、気象庁の
GPVデータの導入などの計算環境の整備を行いながら、実際の事例への適用を重ねて、
メソ異常気象の数値予測手法の確立をめざす。