・研究課題名(番号) 河口領域における災害水理に関する研究 (8Pー4) ・研究代表者  京都大学防災研究所   高山知司 ・研究期間   平成8年10月1日〜平成10年3月31日 ・研究場所   京都大学防災研究所  ・参加者数   21名

<研 究 報 告>

1.はじめに
  平成8年10月から平成10年3月にかけて「河口領域における災害水理に関する研究」の共同
研究を行った。研究の実施に当たっては、4つのサブテーマ(洪水出水と高潮の相互発生特性、河
口部における洪水と高潮の相互干渉、河口部における洪水と波浪の相互干渉、河口部における土砂
輸送)にわけ、共同研究者はいずれかを担当した。

2.研究内容
1) 洪水出水と高潮の相互発生特性
  大阪における台風性降雨と高潮の同時生起性の実態を80年間460個の台風について最大潮位偏差
出現時およびピーク雨量発生時の台風位置を求め、降雨と高潮に関する回帰分析を行った。さらに
確率的台風モデルとそれによる高潮、降雨のシミュレーションを行い、ピーク降雨量と最大潮位偏
差の関係がほぼ実測値の全般的傾向と一致した結果を得た。それらに基づいて、Marked point
processes理論により台風時ピーク降雨と高潮最大潮位偏差の年最大値の等リターンピリオド線の
推定法を提案した。

2) 河口部における洪水と高潮の相互干渉および

3) 河口部における洪水と波浪の相互干渉
  流れおよび水深の急変化を考慮した拡張型非定常緩勾配方程式を用いて、河口部周辺の波浪変形
計算を行った。波向線法では焦点が形成されるケースでの回折効果を考慮することができた。また、
現在流れの効果を考慮したブシネスク方程式を誘導している。

4)河口部における土砂輸送
  新潟県の姫川と関川をとりあげ、過去に大規模な土砂流出があった時点からの河口地形の変動を
詳細に検討した。とくに関川は河口部の直江津港において導流堤や突堤工事が繰り返され、上流部
では砂防ダム建設が継続し、それらによる土砂のせき止めによって汀線が変化してきた。最新の資
料を追加して平成7年の大規模土砂流出に伴う変化を追跡し、将来の地形変化を予測するモデルを
構築している。

5)河口部における危険地域評価手法の構築
  高潮と洪水の重畳災害の危険性を大阪湾と淀川を対象として、高潮と洪水のピーク生起時差と河
川水位、断面平均流速の関係について考察し、さらに氾濫解析の結果を用いて防災対策を検討した。
河川には1次元解析を海域には2次元解析を用い、河口部において接続して両者の同時計算を行っ
た。接続に際しては河川から海域へは河川流量を流量フラックスに変換して与え、海域から河川へ
は河口部における水位を下流端条件として与えた。高潮ピークが満潮時におけると想定し、洪水ピ
ークと±3時間(7通り)の生起時差を与えて計算した結果、上流では重畳による影響はあまり見
られなかったが、下流では生起時差ー1時間の時に高い水位上昇が見られ、+3時間のときに流速
の増加が見られた。台風モデルによっては最大水位上昇が堤防天端高に達し、越流する結果を得た
が、氾濫解析の結果では氾濫域、浸水深ともに軽微であった。しかし河道内の波浪や風力を考慮す
れば重畳時の危険性は十分認識しておく必要がある。