・研究代表者 京都大学防災研究所 渡辺 晃
・研究期間 平成8年10月1日〜平成10年3月31日
・研究場所 京都大学防災研究所
・参加者数 17名
(1)目的・趣旨 西南日本では、南海トラフやフィリピン海溝などの巨大地震の前に、内陸部にいくつかの 大地震が発生することが歴史的に確かめられている。1995年兵庫県南部地震の発生は、西南 日本内陸部が海溝系巨大地震の前駆的活動期に入ったことを示すものである考えられている。 このようなマグニチュード7クラスの内陸地震の予測は、現在のところ困難であるとされて いるが、兵庫県南部地震の前兆現象として捉えられた本震前の地震活動の静穏化など諸項目 の時間的変化を定量化し、有意な変動を取り出すことによって、前兆現象の客観的な判定基 準を確立するための研究を推進しなければならない。しかし、この判定基準は、地域により、 また、地震の規模によって異なってくる可能性がある。このような観点から、西南日本の広 い範囲で、特徴ある地域性を考慮しながら、比較研究を推進することにした。 (2)研究経過の概要 共同研究の実施計画を策定するため、平成8年12月に所内および所外の共同研究者が参 加する研究会を開催し、次のような実施項目を決めた。各項目についてそれぞれの担当者が 順次実行に移した。 1.微小地震データセットの作成:防災研究所ネットワーク、東京大学地震研究所ネット ワーク、および高知大学ネットワークの読みとり値を総合したデータファイルを過去 10年間遡って作成する。 2.共同研究用基礎データベースの構築:この総合データファイルから、震源要素を再決 定し、より均質なseismicity mapを作成する。また、目立った地震のメカニズム解 を再計算する。 3.seimic region の設定:上記データを用い、地震活動の定量的評価を行うための母集 団の設定を行う。 (3)研究成果の概要 平成9年2月および7月に研究会を開催し、研究成果について議論した。共同研究論文集 にも掲載されているように、統合データファイルの完成により、従来に比べて格段に均質な 地震活動が取り出せるようになったこと、また、このデータベース用いることによって、地 殻構造の地域的な特徴が明確になり、その拡がりや地震規模に関連する地震活動の定量化が 可能になってきたことは、ともに、特筆すべきことである。これらは、内陸大地震の発生ポ テンシャル評価のための基礎的資料となるものであろう。