諏 訪之瀬島火山における火山ガス蓄積量と爆発現象の検討

東京工業大学 火山流体研究センター 平林順一・及川 光弘
京都大学      防災研究所         井口 正人
京都大学     理学研究科         森 健彦

1.SO2ガス放出量測定装置の開発

 桜島など爆発的噴火を繰り返す火山では、爆発前に火山ガスの放出量が減少することが 目撃され、同時に火山体の膨張が観測されている。 これまで火山ガス(SO2)放出量測定に用い られている紫外線相関スペクトロメーター(COSPEC)は大型で、機動的観測に適していない。そこで、USB分光器 を用いた小型軽量のSO2放出量測定装置(DOAS)を独自に開発し、COSPECとの比較観測、適正な紫外線 吸収波長の選択、測定方の検討などを重ね実用化した(図1、2)。図1には、パンニング法での機器構成を示した が、トラバース法では、このうち集光レンズユニットとCCD分光器、ノートPCのみを用いて測定する(詳細は火山 爆発のダイナミクス報告書参照)。開発した測定器を用いて、現在活発な爆発活動を繰り返している諏訪之瀬島 火山で、爆発前の火山ガス蓄積量と爆発との関係について検討した。

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図1: パンニング法で用いる測定器の構成

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図2: スキャンミラー部及び集光レンズ部の詳細


2.諏訪之瀬島火山の爆発前の火山ガス蓄積量

 頻繁に爆発を繰り返す諏訪之瀬島では、噴火発生の50-90秒前から火口周辺の地盤が膨張し、 噴火後急速に収縮することが観測されている。爆発現象と爆発前の火山ガスの蓄積量との関係を明らかに するため、諏訪之瀬島火山において2003年11月3日〜16日、2004年4月24日〜28日、2004年7月6日〜10日の 期間、DOAS法によるSO2放出量の測定、赤外熱映像装置とビデオカメラによる爆発現象の観測 を同時に行った。SO2放出量は、山麓でのパンニング法およびカルデラ縁での固定法で測定した。


2.1 2003年11月の観測

 諏訪之瀬島火山における3回の観測期間のうち、2003年11月の観測時は、4日から連続的に 火山灰を放出する活動が続き、個々の爆発に対応した火山ガス蓄積量と爆発との関係を検討するデータは得ら れなかった。しかし、観測期間直前の11月2日には、小規模な爆発が数分ごとに繰り返し発生した(図3)。 地震の変位波形から、個々の爆発発生の60秒から90秒前から山体が膨張し始め、その体積変化は30〜57m3 と求められている(井口ほか、2004)。

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図3: 諏訪瀬島2003年11月2日の地震の上下変位記録(井口ほか、2004)

 2003年11月観測期間の非爆発時のSO2放出量は約500ton/dayである。このSO2が 爆発前の90秒間にすべて火口直下で蓄積されたとすると、その量 は、520kgである。噴石の放出速度やその到達高度などから、ガスチャン バーの内部圧を100気圧とし、理想気体の状態方程式を用いて1000℃でのチャンバー内SO2体積を 求めると約8m3となる。火山ガスのH2O:SO2体積比を15:1〜30:1 とすると、130m3〜260m3となり、井口らによる地震の変位記録から求めた爆発 前の体積変化量の約3〜6倍となる。爆発前に火口からの火山ガス放出が完全には止まらないとしても体積 の差が大きく、火口直下に火山ガスを蓄積するガスポケットが存在することを示唆している。

2.2 2004年4月の観測

 2004年4月の観測期間中の4月28日には、8時5分、10時5分、15時29分に大きな爆発 (写真1、2)があり、14時15分にも小規模な爆発が発生した。同日、山麓でのDOASによる観測では、 10時5分の爆発後12時00分頃までSO2放出量は多く、最大1,700ton/dayであった。その後 14時15分の噴火前までは400ton/dayで推移し、同噴火後SO2放出量は再び増加し、最大1,000ton/day であった。その後15時29分の噴火まではSO2放出量は400ton/dayに戻った。同噴火後には最大 2,000ton/day以上となった。これらのSO2放出量の時間変動は、振動エネルギーの時間変化と非常 に良く対応している(図4)。ただし、噴火後の火山灰の影響でSO2放出量が過小評価されている可 能性がある。4月28日15時29分の爆発によるガスの蓄積は、地震の変位記録から爆発前の約150秒間で、地震の 変位波形から見積もった体積変化量は11月2日に間欠的に起こった小爆発の2倍の60〜100m3で ある。一方、噴石の放出速度から内部圧を110気圧とし、内部温度を1000℃、H2O:SO2 体積比を15:1〜30:1として計算したチャンバー内のガス蓄積量は160〜310m3となり、体積変化量 の約2〜4倍となる。したがって11月の観測と同様に、火山ガスを蓄積するガスポケットの存在が示唆される。 また、同爆発発生後の約1時間に放出されたSO2量は少なくとも30tonで、非爆発時のSO2 放出量の約2倍となる。爆発後約1時間火山灰の放出が続いたことを考えると、爆発後マグマ頭部では激しい発泡と 脱ガスが起こっていることが考えられる。

2.3 2004年7月の観測

2004年7月の観測期間中は、爆発活動は無く、この期間のSO2放出量は約 200ton/dayであった。

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写真1 2004年4月28日、15時29分の爆発
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写真3 カルデラ縁でのビデオカメラおよび赤外線熱映像装置による観測(2004年4月28 日)
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写真2 DOASによるSO2放 出量の測定
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図4 諏訪之瀬島、2004年4月28日のSO2放 出量(上)
と振動エネルギー(下)