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 2.部門・センターの将来構想

2.7 地震予知研究センター


1.部門・センターの目的
 一口で言えば「地震予知研究」。
狭い意味での予知研究ではなく、大学の研究機関として理学的な基礎研究に重点を置いた研究を進める。  @発生確率が高い南海トラフ沿いのプレート間巨大地震、Aその発生が近づくにつれ活発化すると予想されている内陸被害地震の予知研究、B教育及び研究成果の社会への効果的普及(Outreach)、を当センターの3本柱としている。

2.部門・センターの目的の変更必要性の理由と新たな目的
 変更の必要はないと考えている
(理由)
上記の目的は当センター設立10年を経た平成12年から13年にかけて、今後の当センターの研究・教育方針を策定した結果であり、当分この方針を堅持する。

3.部門・センターの現在の研究活動に即した目標と達成したい成果等、および、5年程度の中期目標とそれ以上の期間の長期目標
(5年程度の中期目標)
 向こう2年間(平成14、15年度)は、平成10年に測地学審議会が建議した「地震予知のための新たな観測研究計画の推進について」を実施・遂行していく。“新たな”という意味は、従来の前兆現象に依拠した経験的な地震予知手法から脱却し、大地震発生に至る準備過程や地震発生場の環境(不均質構造・熱構造など)といった地震予知のための基本的な研究から積み重ねると言う意味である。なお、前項1、2の回答内容は“新たな”建議の精神に準拠して改革した結果である。
設問1であげた3本柱のうち
@南海トラフに関する研究プロジェクトは
1)南海トラフ沿いの巨大地震の予知研究、
2)地殻不均質構造の評価と大地震発生のモデリング、
A内陸地震予知研究に関する計画は
3)鳥取県西部およびその周辺の応力蓄積過程の研究
4)断層の回復過程の研究
5)活断層周辺の応力蓄積過程の研究
6)直下型地震の地震環境評価、
7)高感度比抵抗変化計の開発、
などであり、それぞれに達成目標を掲げている。
B教育とOutreachに関しては
9)学内外における学部学生・院生の教育、研究指導は当然のこととして
10)自治体や市民向けの地震に関する講演会
11)新聞・ラジオなどへ地震情報、解説記事の提供
を行っている。
 観測所は上記の研究計画を推進するための観測拠点として、また地域に密着したOutreach の発信拠点として位置づけている。具体的には、従来の8観測所を観測所群に再編成し、上記のプロジェクトの推進に資するように運営する。その際、これまでの観測データの蓄積が今後の研究に十分反映できるように配慮する。後述のように、全国的な観測網が整備されてきたが、大学の観測点は、今のところその一翼を担っているので、その充実に努め、良質の観測データ生産を目指すとともに、全国的な観測網のデータではできない研究のための観測を実施する。特定の地域、活断層等の調査・研究がその一つの課題になる。このことは、地域に密着したホームドクター的な研究課題を果たすことにもなり、得られた知識を社会に広く還元する上でも有用と考えられる。また、いくつかの特徴的な地域を深く比較研究することは、地震発生過程の研究の全般的な発展にもつながる。
 平成16年度以降「建議」がどのような形でなされるか、現時点では不透明ではあるが、当センターの向こう5年程度の中期目標は基本的には、上記の方針と変わらない。

(5〜10年程度の長期目標)
 高感度地震観測に関して、現在、地震調査推進本部が進めている基盤観測点500点余に、大学の微小地震観測点250点余りと気象庁約250点を加えた合計1,000点余りが日本の高感度地震観測を支えている。
 大学の観測点は研究を目的としており、当面はやむをえないが、将来とも業務的観測に組み入れられるのは好ましくない。従って今後は徐々に、大学の観測点を基盤観測網から外し、大学は本来のプロジェクト指向の研究観測に戻すべきである。このような考えにあたって、当センターからも意見を発信しているし、我々の計画も8)新地震予知計画推進体制の整備の中でそのことをうたっている。
 地震観測だけでなく、GPS観測等も国土地理院によって定常的な観測がなされ、かつデータも公開されるので、我々の観測は本来の研究に即した形態になることを期待する。その上で、設問1で述べた大目標に向かって研究を推進したいと考えている。

4.部門・センターの目標を達成する上で、現在の分野・領域構成は適切かどうか。変更する場合の理由と構成
 分野の名称はともかく、人的配置など内容に関してはほぼ適切な構成と考える。その理由は、当センター発足当時から大部門的に運営しており、目的達成のために分野の構成はその都度(機会がある毎に)議論した上、必要な場合は実質的に変更しているからである。3で述べたように3本柱のもとでの研究プロジェクトをスタートさせた際にもこの大部門的運営を活用し、各研究プロジェクトに対して研究チームを構成している。

5.部門・センターの目標を達成する上で、現構成メンバーの専門分野でカバー可能か。不可能な場合に新たに必要な専門分野
 カバー出来る。
 地震予知の基礎研究からOutreachまで、すべてを充分にカバーしようとすれば、必要な人材の要求は際限がない。必要に応じて増員要求もするが、現人数でも、目標を掲げ、ターゲットを絞った研究をすれば目的は達成出来ると考えている。

6.部門・センター内での大講座的運営の実態。大講座的運営のメリットとデメリット
 大講座的運営がなされている。
メリット:人事・予算・研究計画において流動性と融通性を持たせることができる。
デメリット:発足当初、いくつかの面、例えば観測所の運営・維持などで責任体制に関する不安が指摘された。全体で責任を持つということは、逆に誰にも最終的な責任がないと言う不安もあった。しかし、もし大部門制にならなかったとしても、こういうデメリットは存在するものである。当センターでは、各研究プロジェクト毎の研究計画に関する会議はもちろんセンターに研究計画委員会を設け、センター全体としての研究の推進の統括を図り、活性化を常に行っている。従って、デメリットは克服されている。

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