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5.4社会人教育

 防災研究所における社会人教育としては、社会人学生として大学院に入学した学生の研究指導を行う場合と、研究生あるいは研修員等として受け入れる場合がある。

社会人学生とは、大学院博士課程を対象とし、各種教育・研究機関や企業等に在職し、大学院在籍中も引き続きその身分を保有しつつ博士論文の研究指導を受けるものである。社会人学生として防災研究所の教官に研究指導を受けている学生数は表5.2.3に示すように、平成12年度5名、平成13年度7名、平成14年度7名となっており、工学研究科に在籍する学生である。身分を保障されながら研究が継続でき、かつ学位修得の機会が与えられている点で、学生にとっては非常に魅カのある制度と考えられるが、平成12年度以降学生数は微増にとどまっている。防災研究所にとっても、ある程度の実務経験を有する人材に対して、自然災害科学の再教育を施し、より総合的な見識と判断能力を持った防災実務者として送り出すことは、社会の要請に応えることでもあり、その利点は計り知れないので、この制度の宣伝・広報活動が必要と考えられる。この他、大学院入学試験時に社会人別途専攻枠を設けている研究科・専攻もあり、今後同様な制度の拡充・活用が期待できる。

一方、研究生および研修員の受け入れは表5.4.1に示すように、社会人教育のシステムとして全学的に実施されているものである。平成12年度以降、防災研究所に研究生および研修員として受け入れた数は、研究生が10、12、6名、研修員が1、3、4名となっている。平成12年度自己点検評価実施時と比べて、研究生数は平成12、13年度に増加したが、14年度には減少している。研修員数は平成12年度に1名前後と少ないが、その後増加している。但し、研究生、研修員の中には、いわゆるオーバー・ドクターや博士・修士課程退学者も含まれており、制度本来の趣旨に則った活用が十分にされているとはいえない状況である。なお、受託研究員は、平成12年度以降、1、0、1名であり、こちらも少ない状況にある。

研究生・研修員の受け入れに関しては、下記の再教育システムの一環として、国内外を問わず活用すべしとの意見もあるが、受け入れ期間中ならびに期間終了後の身分の不安定等の問題が依然としてある。これらのことは、平成5年度自己点検評価当時から指摘されていたことであり、引き続き改善への努カが望まれる。平成16年度に予定されている独立行政法人化を考えた場合、社会人教育は防災研究所の主要な活動の一つとなるべきものと考えられる。これに備えた制度の整備、広報活動を引き続き行っていくべきである。

上記のような、研究所内での社会人教育とそれを支える制度の整備に加えて、一般を対象とした講義・講演等も広義には社会人教育の範疇に分類される。防災研究所主催の一般向け教育活動としては、公開講座や年次学術講演会等があげられるが、これらについての詳細は、8章「社会との連携」を参照されたい。防災研究所主催以外の講演会等で、防災研究所の教官が講演・講義を行った例は表5.4.2に示すように、平成12〜14年度以降194件にのぼる。平成6〜9年度は122件、平成10〜12年度は130件であったことに比べると、確実に増加している。前回の評価では、担当が特定の教官に集中している傾向があるとの指摘があったが、徐々に担当者も増えてきている。

それぞれの会の趣旨は、地方公共団体主催の講演会、教育機関の研修、学会のセミナー・研修会、調査報告会、シンポジウム・フオーラム等、多岐に渡る。自然災害科学ならびに防災科学の特質を考えた場合、社会人教育制度の整備をはかることは必須であり、その内容は大きく分けて2種類に分類される。

1つは、自然災害に関する高度・広範な知識を備え、災害発生時には周囲に対するリーダーシップを発揮して防災・被害軽減の任にあたることのできる実務者の養成である。もう1つは、災害発生時に個々のレベルにおいて正確な判断を行い得る基礎的知識を備えるべく、一般市民に自然災害科学の基礎から最前線の情報・研究成果を提供することである。

前者においては、特に災害現場において中心的な役割を果たす国・地方公共団体の担当者に対して、知識の共有等の連携をはかりつつ、彼らが容易に再教育を享受できるシステムが肝要であり、防災研究所では、これらの要請に応えるべく、上記のような活動を行い、より有効な制度と教育システムを常に模索し続けている。後者については、地域や学校等を対象とした教育・啓蒙システムの運用も一考に値し、以下のように小・中・高校などの学習、教員研修を担当している。すなわち、平成12〜14年度において防災研究所教官は表5.4.3のように12例行っている。これは平成10〜11年度における3例に比べて大幅に増えており、評価すべき成果であろう。さらに、平成15年1月からは21世紀COEの拠点形成プログラムに防災研究所のプロジェクトが採用されたことに伴い、京都大学防災研究所フォーラムを京都および東京で定期的に開催し、一般を対象とした講義を所員1人当り年2回程度行うことを全所員にノルマとして課すこととなった。

表5.4.1 研究生・受託研究員・研修員の受入数

表5.4.2 講演・講義一覧表

表5.4.3 総合学習・教員研修担当一覧(小・中・高校など)

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