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4.5.2研究分野の活動概要

T.災害気候研究分野

   教授 岩嶋樹也、助教授 田中正昭、助手 井口 敬雄
 (学内研究担当) 理学研究科教授 木田秀次、 助教授 里村雄彦
 (非常勤講師)   福山薫(H12)、寺尾徹(H13)

 産業革命以後の人間活動の爆発的な進展は、気象や気候に影響を及ぼし、それが種々の大気災害を引き起こし、さらに経済・社会に大きな影響を与えるほどになっている。21世紀には、そのような影響が全地球的になることが懸念されている。将来の気候の変動・変化によって生ずることが予想される災害に対処するためには、これまでに生じた異常気象の発現機構や気候システムの維持・変動の機構をあらゆる角度から検討することが不可欠である。

 災害気候研究分野では、異常気象とその発現過程、気候変動原因とその機構を解明することを目標にして、次のような研究課題に取り組んできた:
1)大気組成の変化とその気候及び災害への影響
2)大気大循環の変動による長雨・旱天・異常高低温などの異常気象の発生
3)大規模な大気と陸面・海面の相互作用とその気候への影響
4)東アジアモンス−ンの消長とその異常
5)地域的・局地的大気循環の解明と霧などによる災害

平成12、13年度には、以下の研究を進めた。
  対流圏大気微量成分の変化やその気候への影響に関連する以下の課題について基礎的研究を進めた。オゾン・水蒸気・二酸化炭素などの「大気微量成分が地表付近の気温に与える影響について熱収支モデルを用いた研究」や、温室効果気体として重要な大気中二酸化炭素濃度の長期変動を明らかにするために重要な地球上の植生との炭素交換などの相互作用の研究を行った(「グロ−バル輸送モデルと植生モデル結合について」、「陸上生態系モデルを用いた大気-植生間の炭素交換の研究」)。また重要な環境問題の酸性雨に関して、その主要原因物質である対流圏硫黄化合物の季節変化を明らかにするために「3次元化学輸送モデルを用いた汚染大気における硫黄循環の研究」や「3次元化学輸送モデルを用いた硫酸濃度に対するアンモニアの影響について」の研究を進めてきた。また、二酸化炭素に劣らず重要な温室効果気体である大気メタンについて観測的・解析的研究を進めてきた。これは、人間活動が集中し拡大の一途にあり、特有の発生・消滅源が存在する都市や、その周辺域における大気メタンの実態・動態の解明を目指したものである。海上を含む都市域周辺の大気微量成分(バックグラウンド)濃度分布を明らかにするために、独自の観測によるデ−タや既存の観測網を活用して「都市域とその周辺における大気微量成分濃度とその変動(U)、(V)」の研究を進め、同時に、防災研究所一般共同研究12G-3「都市域及びその周辺のバックグラウンド大気微量成分の動態解明」を実施した。さらに、海底大陸斜面にあり、次世代エネルギー源として注目されている不安定物質のメタンハイドレートについての予備調査研究を進めた(防災研究所一般共同研究13H-4「メタンハイドレートの地球環境に及ぼす影響に関する予備的調査研究」)。

 温室効果気体増加に伴う地球上の降水量・蒸発量など全球的水収支の研究は将来の異常気象発現の予測にも関連する重要課題であり、「大気中二酸化炭素濃度漸増モデル実験における全球的水収支と降水量極値に関する解析」を行った。

 大気循環の変動に関しては、下記の課題について研究を進めた:1)南半球zonal flow vacillationにおける極向き遷移過程、2)環状モードの赤道向き遷移過程、3)エルニーニョ・南方振動に関連する熱帯対流圏温度場の季節規模持続性、4)熱帯対流圏の持続性に関する数十年規模変動、5)北太平洋十年規模変動の微細構造を伴う中緯度海面水温偏差。

 熱帯域における特徴的気象現象に関連して、以下の研究を行った:1)数値モデルとレーダーから見たタイの降水日変化、2)積雲対流による物質の鉛直輸送。

局地気象ついては、前年度に続き「三次盆地における霧の集中観測(第2報)」を実施した:防災研究所一般共同研究12G16「盆地における局地循環と霧発生との関連」。 また複数の都市域が近接する「京阪地域での局地循環による熱・水蒸気輸送」や「複数の都市で発達する局地循環によるエネルギー輸送」を明らかにするための観測や数値実験的研究を進めた。

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