平成19年4月〜7月学会賞等受賞者のコメント


間瀬肇教授、安田誠宏助教
平成19年度日本沿岸域学会論文賞


   本賞は、沿岸域に関する学術の進歩に寄与する優れた論文に送られるものである。受賞論文名は「台風0423号による室戸の高波災害解析」 であり、受賞対象者は、間瀬肇教授および安田誠宏助教である。本論文は2004年の台風23号による室戸市室戸岬町における海岸災害を解 析したものであるが、従来の台風による高潮・高波災害解析とは異なる観点から、室戸岬町菜生海岸での防潮堤の被災を解析した。著者らの これまでの研究成果を応用し、市民にヒアリング調査した被災時の状況を説明可能とした。これからも基礎研究を通して、海岸防災に役立つ 研究に邁進したいと存じます。


井合進教授
平成18年度土木学会関西支部技術賞特別賞


 この度は、「チャート式耐震診断システムの開発〜海岸堤防の耐震性を早くかつ安く診断〜」に対して、土木学会関西支部技術賞特別賞の 受賞のお知らせをいただきました。一井康二准教授(広島大)、菅野高弘氏(港空研)、国土交通省近畿地方整備局神戸港湾空港技術調査事 務所、財団法人沿岸技術研究センターとともにいただいた賞です。チャート式耐震診断システムとは、津波から市街地や陸地を守るための海岸 保全施設の施設形状と地盤の強度等の情報から、模型実験、FLIP解析(二次元有効応力解析)を用いた膨大なパラメトリックスタディを実施 し、これらの結果を集約して、本来、多くの費用と時間を必要としていた地震時の施設の残留変位を、簡便に、かつ、瞬時に評価することができ るようにしたものです。今回の受賞は、その汎用性・発展性を評価していただいたもので、関係者一同心から喜んでいます。今後の大規模地 震・津波対策など、多方面での活用が期待されます。


寶馨教授
土木学会国際活動奨励賞


 東南アジア・太平洋地域を中心として十余年に亘るユネスコ国際水文学計画(IHP)への貢献、2002年に創設されたアジア太平洋水文水資源 協会(APHW)と国際斜面災害研究機構(ICL)を軌道に乗せるのに果たした役割、さらには多数の留学生の育成などが評価され、土木学会国 際活動奨励賞を戴くことができましたのは、誠に有り難くまた名誉なことであります。これらの活動の場を与えて下さり、また種々ご協力戴いた 皆様に心より御礼申し上げます。この受賞を励みに、今後も世界の水文学、土木工学さらにはそれに基礎を置く自然災害研究、防災研究の発 展と、日本及び京都大学の国際貢献に微力ながらお役に立ちたいと存じております。


寶馨教授、佐山敬洋助教
土木学会国際活動奨励賞


 平成19年5月25日土木学会総会において土木学会論文賞を受賞した論文は「広域分布型流出予測システムの開発とダム群治水効果の評 価」で、寶、佐山の他に工学研究科の立川康人准教授(平成19年3月まで防災研究所助教授)、市川温助教(平成12年3月まで防災研究所 助手)が連名となっています。この論文は、社会防災研究部門防災技術政策研究分野において開発してきた分布型降雨流出モデルに流域内 に8個存在する多目的ダムの操作規則を組み込んだ洪水予測システムを開発したもので、数千平方キロメートルという広い流域に適用し、治 水安全度向上の変遷を定量的に示したことが高く評価されました。
 このシステムは、光ファイバーケーブルによってリアルタイムで国土交通省から入手できる水文・気象データを利用して、淀川流域内の多地 点においてリアルタイムで洪水予測ができるようになっています。洪水予測情報などを大学からどのように発信できるのか、今後さらに検討を 進めていきたいと存じています。本研究のためにデータや通信施設を提供・整備していただいた関係機関や、研究を補助してくれた学生諸君 に謹んで御礼申し上げます。


研究室の大型ディスプレイに表示された
淀川洪水予測システムと受賞者
(左から、市川、寶、佐山、立川)


三村衛准教授
2006年ASTM Hogentogler Award


 このたび、ASTM(American Society for Testing and Materials, 米国材料試験及び材料物性学会)の論文賞にあたる、2006年度 C. A. Hogentogler Award(ホーゲントグラー賞)を受賞いたしました。受賞対象論文は、同学会のGeotechnical Testing Journal, Vol. 29, No. 1, 2006に掲載された“In Situ Evaluation of Radioisotope Cone Penetrometers in Clays”で、故柴田徹先生とともに、ソイルアンドロックエン ジニアリング鰍ニの間で共同開発したR I コーン貫入試験装置を、埋立地盤の品質管理ツールとしてシンガポールのプロジェクトに適用し、その 有用性を論じたものです。新しい装置の開発とその実務的貢献が高く評価されました。共同著者である国立シンガポール大学の友人達と喜び を分かち合いたいと思います。最後になりますが、関係各位に心より御礼申し上げる次第です。


ASTM D18(Soil&Rock)の
J.M. Hortonチェアマン(右)と