「大都市大震災軽減化特別プロジェクト」カテゴリーU

耐震壁浮き上がり挙動を再現する振動台実験に用いる動的試験デバイスの開発と
その特性試験<サブ研究チーム>


 「大都市大震災軽減化特別プロジェクト」は、文部科学省・研究開発局の防災科学技術推進室から平成14年度に出されたものであり、首都圏や京阪神などの大都市圏において極大地震が発生した際の人的・物的被害を大幅に軽減することを目指し、地震防災対策に関する科学的・技術的基盤を確立することを目的としている。そのうちのカテゴリーU・耐震性の向上「振動台活用による耐震性向上研究」においては、「鉄筋コンクリート建物の縮尺モデルによる三次元動的挙動の解明」(平成14年度〜16年度)と題し、コア組織では東京大学地震研究所・壁谷澤寿海教授を中心にE−ディフェンスの活用を目的とする実験計画が提案された。実験対象は立体耐震壁を持つ6層建物であり、その大きさは1/3縮小モデルで高さ7m、幅5m、奥行き5mであり、三方向地震動入力を行うことになっている。その主目的は、三方向地震入力による破壊過程を解明し、従来実験検証されてきた1方向の地震動入力による建物応答との比較を行うとともに、耐震壁の浮き上がりによる建物応答の影響も検証しようとするものである。これらの研究結果を基に、最終的には、実大鉄筋コンクリート建物の破壊実験を実施し、震災の低減に直結する成果の創出をめざすことになっている。
筆者等は、サブ研究チームとして平成14年度〜16年度に渡り、 耐震壁浮き上がり挙動を再現する振動台実験に用いる動的試験デバイスの開発とその特性試験を行うことになっている。研究協力者は豊橋技術科学大学工学部・角徹三教授、東京大学工学研究科・塩原等助教授 、京都大学工学研究科・河野進助教授、京都大学防災研究所・諸岡繁洋助手の4名である。平成14年度においては、図に示すような中層RC造連層耐震壁と杭基礎の要素モデル(下部二層をモデル化)を2体作成し、地震時水平加力実験を行った。本実験では、1体は1階壁脚の曲げ降伏、他の1体は基礎梁曲げ降伏を設定し、基礎スラブを含む基礎梁への杭頭曲げモーメント及び水平せん断力等の応力伝達経路及び伝達機構の解明を目的としており、得られた実験データは、以下の項目に着目して解析を行っている。
(1)基礎スラブのコンクリート表面歪分布およびスラブ筋の歪分布状態の実測値から、基礎スラブの有効協力幅を評価する。
(2)1階壁脚の曲げ降伏前から降伏後までの壁脚水平曲げひび割れ面における、水平せん断力伝達に対する(a)壁縦筋のダウエル効果、(b)ひび割れ面の骨材のかみ合いを含むコンクリート面摩擦の効果を定量的に評価する。 以上の実験結果およびFEM応力解析結果から、平成15年度においては、 耐震壁浮き上がり挙動を再現する振動台実験に用いる動的試験デバイスの開発を行いその力学的特性評価を行うとともに、平成16年度においては、開発された動的試験デバイスを用い、コア組織を中心とした3方向地震入力実験を計画している。

中層RC造連層耐震壁と杭基礎要素モデルの静的水平加力実験

地震災害研究部門 田中仁史