洪水及び地形変動による災害とその防御

 洪水・土砂災害に関しては、昨年度までの3ヵ年には、メラピ火山一帯およびクリー火山とこれを収り巻くブランタス川を対象として土石流の観測とシミュレーション、洪水流出の実態と解析、土砂流出形態の調査、流路,河床変動の調査とシミュレーションを行ってきた。その結果、わが国で行ってきた調査、解析方法がインドネシアにおいても有効であることが判明した。現在、ブランタス川流域では、熱帯特有の洪水流山現象の解明と土砂流出、流路変動等のSediment Routingに関する問題の解明を行っている。
 一方、海岸侵食の問題では、重要な観光資源であるバリ島の珊瑚礁海岸の侵食制御は緊急課題であるため、昨年までの3力年の共同研究では、サヌール、ヌサ・ドウァおよびクタ海岸を対象として、海岸の侵食機構を明らかにするための観測、数値シミュレーションを実施し、侵食対策工法の提案を行っ逢。1994年10月に神戸で開催された海岸工学国際会議においては、研究成果として2編の論文が採択され発表された。
RIWRD(インドネシア公共事業省水資源開発研究所)のDede Sulaiman研究員が10月22日〜11月6日の間来日し、この会議で研究発表を行うとともに、今年度からの研究打ち合わせを行った。さらに、3ヵ年の共同研究の発展的な成果として、サンゴ塊の採鉱が最大の侵食原因である珊瑚礁海岸の保全対策にサンゴの移植を援用することが提案され、1994年の夏に現地で移植実験が行われた。現在、移植された珊瑚は順調に成長しており、この方法の実用化に向けて現地での共同研究者との間で新たな共同研究のテーマが芽生えつつある。
 今年度からは、ジャワ島中部のセマラン海岸とその流域をサイトとして、洪水・土砂災害および海岸侵食の総合的な研究を行うための現地調査を開始しており、すでにこの海岸に海象観測装置を設置しており、流域では地形変化、底質調査、土地利用形態の変化、衛星データの収集解析が継続中である。